趣味で歌と小説と詩を掲載させていただいてます。

種 第13話 Seed Episode 13

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第13話

ガレージに入ってくる風はどことなく草花の香りを運んでくる。いい香りがする。街には車が行き交うシュンシュンというタイヤの音がわずかに聞こえる。

「菊蔵さん、外へは出歩いてみてみたの?」

「もちろん、そこら辺を散歩してきたよ。俺の世界とは明らかに違う。空気が綺麗だし、ピリピリした感じもない。何か、とても穏やかな雰囲気を感じるんだ」

「私はここを探すことに頭がいっぱいになっていたから、あまり街をよく見ていないんだけど、雰囲気としては元の世界と同じ感じよ。空気は確かにいい気がするけど」

「車が走っているけど、あれは多分電気自動車か、何か別の動力で動いているんじゃないのかな? 貴子さんの世界ではもうエンジン式の車は走っていなかったんだろう?」

「私の世界では車はほとんどエンジン式よ。電気自動車はまだあまり普及していなかったわ」

菊蔵は少し考えてから「違う世界なのか?」と聞いた。

「わからない、とにかくもっとよく見てみましょう」と貴子は言った。

貴子と菊蔵はガレージを出て神社の方まで行ってみることにした。

意識して息をしてみると、とても美味しい空気だと気付いた。街の家の前に駐めてある車は見たこともないような車もあったが、見たことがある車も多くあった。

「あの車はエンジン式のはずよ」と貴子は言った。

「そうだな、あの車は俺も知っている。エンジン式だった」

各家庭に車は1台か2台はあった。その大半は見たことのある車だった。

神社に着くと狭い駐車場に何台かの車が駐めてあった。「この車もエンジン式だな」と菊蔵が駐めてある一台を指しながら言った。

そこに乗用車が一台駐車場に入ってきた。「エンジン式だ」と菊蔵が言った。

車はジャリジャリと敷地に敷かれた砂利の上を走ってきた。横を通り過ぎる時に「エンジン音がしないな」と菊蔵が言った。「ちょっとドライバーに聞いてくるよ」そう言って菊蔵は止まった車に駆け寄った。

ドライバーと菊蔵は何かを話し込んでいた。その光景は、お互いに初めてにして、驚きと興奮が混じっているような雰囲気だった。

戻ってきた菊蔵は「フリーエネルギーっていうもので動いているみたいだ」と言った。

「フリーエネルギーってなんなの?」と貴子は聞いた。

「聞いたところによると要するに、空気中から取り出せるエネルギーのことらしいよ。大気は電気を帯びている。だから空気中からはいくらでも電気を取り出せるみたいなんだ。それで動いている」

「私の世界にはないものだわ」

「そうだね、ここは貴子さんの世界ではないと思う。貴子さんの世界よりはもっとマシな世界だ」と菊蔵は言った。

「私の世界ではない?」貴子は聞きたくない言葉を聞いてしまって、少し戸惑っていた。でも考えるのは後だ。今は事実をそのまま受け入れる。そこに感情はいらない。「自動車がそのフリーエネルギーで動いているのなら、その他の電力とかはどうしているのかしら?」

「すべて自然エネルギーだよ。化石燃料を使うのをやめたみたいなんだ。電気は空気から取れる。その他のエネルギーも木材から取れる。化石燃料を使う意味はもうないらしい、世界はそこにシフトしたみたいだ」
「エンジン式の車もフリーエネルギーなの?」

「エンジンを積み替えたようだよ。車のフレームや車体はまだまだ使える。使い捨てもやめたみたいだ。エンジンを積み替えたら、細かい消耗部品を交換するだけで新車みたいになるようだね。世界に車は溢れるほどある。それを全部破棄することなんてしなかったようだね」

「フリーエネルギー。それはどうやって発電するの?」

「それは俺もよくはわからない。磁場とかそういうのも関係しているみたいなんだけど、要するに『大気は電気を帯びている』ということが基本にあるみたいなんだ。雷のようなものだね」

「『大気は電気を帯びている』電気っていうのは基本的に空気の中に存在しているのね?」
「そうみたいだね、磁石みたいにプラスとマイナスの世界だよ。地球は大きな磁石なんだ。地球それ自体が大きなエネルギーの塊なんだよ。だから当然電気も帯びている。単純にそれを取り出せばいい。そんなに難しいことではないみたいだね」

「そのエネルギーは排気ガスを出さないのね?」

「そうだね、もちろん出さない。何も燃やさない。ただ空気から取り出すだけみたいなんだ」

「ここはどこなんだろう」と貴子は思った。「元の世界に戻った訳ではなかったんだ。私はまた知らない世界に来てしまった。それは私が変わってしまったからなんだろうか? この世界が私の生きるべき世界なんだろうか?」




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Episode 13


The wind coming into the garage carries fragrance of flowers somewhat. It smells nice. The sound of the tire called Shunshun where cars go and go is heard in the city.
"Mr. Kikuzo, did you try going out to the outside?"
"Of course, I've taken a walk around there, it's obviously different from my world, the air is clean and I do not feel as if I'm feeling sick, I feel something very calm."
"Because I am overwhelmed by looking for this place, I do not see much of the city much, but as an atmosphere it feels the same as the original world, although air feels good indeed."
"Although the car is running, that is probably an electric car, or is it moving with something different? In the world of Takako you have not run an engine-powered car anymore?"

"In my world cars are almost engine-driven, electric cars have not been popular yet"
After thinking a little about Kikuzo, I heard that "Is this a different world?"
"I do not know, let's take a closer look anyway," Takako said.

Takako and Kikushi left the garage and decided to go to the shrine.
When I consciously breathed, I noticed it was very tasty air. There were cars that I had never seen cars parked in front of the house in the city, but there were many cars I've seen.
"That car should be of engine type," Takako said.
"Yeah, I know that car, it was an engine formula."
Each house had one or two cars. Most of them were cars I've seen.
When arriving at the shrine there were several cars parked in a small parking lot. "This car is also engine type," said Kikushi while pointing at one of the cars.
A passenger car came into the parking lot there. "It's an engine formula," Kikushi said.
The car ran on Jarijari and the gravel laid on the premises. When passing by the side, "There is no engine noise," Kikushi said. "I will ask the driver for a moment." That said so, Kikushi ran to the stopped car.

The driver and Kikushi were talking about something. That scene was the first time for each other, the atmosphere seemed to be mixed with surprises and excitement.
Kikushi who came back said "It seems to be moving with free energy."
Takako asked, "What is free energy?
"In short, it's about the energy you can take out from the air, the atmosphere is charged with electricity, so you can take out any amount of electricity from the air, so it's moving."
"It is not in my world"
"Well, I think that this is not the world of Takako, it is a better world than Takako's world," Kikuro said.
"Is not it my world?" Takako had heard a word he did not want to hear and was a little confused. But I think about it later. Now accept the facts as they are. I do not need emotions there. "If the car is moving with its free energy, what about other electricity?"
"It's all natural energy, I ceased to use fossil fuels, electricity can be taken from the air, fire can be taken from wood, there is no point in using fossil fuels, the world seems to have shifted there." Is the car also free energy? "
"I switched the engine, I can still use the car frame and the car body, seems to have stopped throwing away.If you change the engine, seems to be like a new car just by replacing small consumable parts.The car overflows to the world There seems to have not been done to discard it all. "
"Free energy ... how do we generate electricity?"
"I do not know well about it, it seems that the magnetic field and that are also related, but in short it seems that there is basically" the atmosphere is charged with electricity. "It is like thunder."
"Is the atmosphere" with the electricity "basically exists in the air?" "Looks like it is, it's a plus and minus world like a magnet, the earth is big It's a magnet, the Earth itself is a lump of large energy, so of course it's also powered by electricity, simply taking it out seems to be not that difficult. "

"That energy does not emit exhaust gasses?"
"Yes, of course I will not put out anything, I will not burn anything, just like taking it out of the air"

Takako thought, "Where is this place?" "I did not return to the original world, I came to an unknown world again, because I changed, is this world the world I should live in?"


種 第12話 Seed Episode 12

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第12話




「11年前の世界に戻ってきたみたいね。私が別の世界に入って行った時間に」と貴子は言った。

二人はガレージに置かれたキャンプチェアーに座って、菊蔵がいれたお茶を飲んでいた。

「そうみたいだね。貴子さんがいた世界だ。でも俺が知っている世界じゃない、俺の世界の過去は、もうこの時代では大きく変化が始まっていた。見たところ、まだ世界は穏やかそうだ。ここは貴子さんの世界で俺の世界ではないよ」と菊蔵は言った。

「それはどういうことなのかしら? 私と菊蔵さんはそれぞれ別の世界で生きているってこと?」と貴子は聞いた。

「そういうことだね。別の時間軸の世界。パラレルワールドみたいなものかも知れない。俺は貴子さんに引きずられてここにきてしまったのかも知れない」と菊蔵は言った。

「何かこうやって話をしているとさっきの続きが始まっているような感覚になるわね。ついさっきまで、私はここで菊蔵さんと話をしていた」

「そうだな。貴子さんと話をしていて、気がつくとこの世界で目が覚めたんだ。このガレージのこの椅子の上でな。そして俺は世界が違っていることに気づいた」

「『別の時間軸の世界』ってどういうものなのかしら?」と貴子は聞いた。

「例えば『並行宇宙』とも言ったりするけど、同時進行している別の時間軸の宇宙のことだよ。俺はなぜか昔からこの並行宇宙を行ったり来たりしているような気がするんだ。名前や周りの状況に何も変わりはないんだけど、少しずつ何かが違っているんだ。さっきまでいた時間軸の宇宙ではありえない方向に時間が流れている、そんな感覚があって、これは別の並行宇宙に瞬間移動してしまったんだと感じるんだよ」

「時間軸を移動するっていうことね。それが私と菊蔵さんに起こっている。だったら私の世界は菊蔵さんの世界と違って、まだ終わりかけてはいないってことね」

「そうだな、まだ終わりかけてはいない。俺の世界ではもう災害が立て続けに起こっていたんだ。世界中で。人間は何もできずに自然に翻弄され始めていた」

「じゃあこの世界に移動したってことは、ご家族も助かるかも知れないっていうことね」

「そうだな。俺は違う未来に行けるのかも知れない。だったら家族は絶対に死なせない。どうして亡くなったか俺は知っているからな。やり直せるなら、俺は違う未来に行くよ」

「ご家族にその話はしたの?」

「いや、家族には話さないよ、変に思われるし、信じないと思うからね」

「そうね、でも本当にそれが可能ならいいわね。原因があって結果があるっていうのが本来だけど、その間で別の要因が加わってそれぞれ別の結果にたどり着くっていうことなのかも知れないわね。それが同時にそれぞれの時間軸の上に存在している」

「やった時とやらなかった時だよ。同じ『種』をまいても水や土をやった時と何もしなかった時では結果が違う。水をやったことが新たな因となる。やらなかったことも因となる。そしてそれぞれ別の結果にたどり着く」

「なぜ違う時間軸に移動するのかしら? 時間軸は一つということが常識のように思うけれど」

「そうだな、単純に考えると時間軸は一つなんだろうな。俺は昔からそんな感覚があったから、並行宇宙とかそんなことをいろいろと考えていたんだけど、それは『関連性』に関係してるんじゃないかと思うんだ。個人の結果の変化はその個人だけの結果の変化では終わらない。必ず周囲の環境まで変化することになる。人間や社会は『関連性』の中で変化しているからね。個人の変化は周囲にも影響する。だから違う時間軸の世界が同時にいくつも必要なんだよ。変化してしまった個人はもうその時間軸にいられない。変化に合わせた環境の時間軸に移動する。パッと世界が変わるように」

「確定的事実ではないにしても、面白い考え方だと思うわ。一瞬にして世界が変わるっていう歴史の事実も過去にはあるみたいだし。私の感覚だと別の時間軸の宇宙のつぎはぎが一本の時間軸になっているっていう感じもあるけど」

「いろいろな感覚があってもいいのかも知れないな、もちろん時間軸は一つだっていう感覚もありだと思うけど、それは感覚の問題で、事実にはあまり影響のないものだからね。ふと思うんだけど、人間は世界が持続不可能になる因を作り続けているけど、もう片方では世界が持続可能になるような因もつくっているのかもしれないな。両方の『種』を同時に蒔いているんだよ、何かの加減で世界がどうとでも変われるように。そしてそれは意識してやっていることではないことに含まれている。『善い種』っていうのはそんなものなんじゃないかって思うんだよ」

「意識せずにやっていることの中に『善い種』が含まれるってこと?」

「例えば意識では操れないものが本能だと思うんだよ。内臓も本能が動かしているものだし、人間の大部分を無意識や本能が動かしている。人間が自然由来の生き物だとするならば、本能や無意識の中に『自然に帰ろう』という感覚があるはずなんだ。その感覚が『善い種』を残しているんじゃないかって思うんだよ」

「それも面白い考え方ね。でも『並行宇宙』や『パラレルワールド』はいろんな仮説が出来てしまいそうね。とにかく世界は一つではないってことよね?」

「ここは俺の世界ではないからね。俺はもうこの時代を経験しているし、その世界ではこの時代はこんな風ではなかった」

「じゃあタイムスリップはなぜ起こるのかしら? 私が11年先の未来に行ったことや菊蔵さんがこの過去の世界に来たことは?」

「そうなってくるとすぐには答えは出ない、もちろん確定的なものではないけれど、ある程度の核心みたいなものまでたどり着くのに時間が要りそうだな。タイムスリップが起こる訳か・・・」

貴子は菊蔵が考え込んでいるのを見て、もう一度改めてガレージから外を眺めた。

何もかもが手入れされた景色が広がっていた。道路も公園も建物も全てのものに何かしらの手入れがされていた。

「私は違う時間軸に行って、それを経験したんだ。それは記憶として持っている。私は明らかに変化している。もしかしたら、この世界も元の私の世界ではないのかしら?」貴子は風になびく街路樹を見ながらそう思った。






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Episode 12


"It seems they came back to the world 11 years ago, at the time I entered another world," Takako said.
They sat on a camp chair located in the garage, drinking tea that Kikushi was in.
"It seems like it is the world that Takako was in. But it is not the world I know, the past of my world has already started to change significantly in this era As I have seen the world is still calm This is not Takako 's world in my world, "Kikuro said.
Takako asked, "What does that mean? I and Kikuzo are living in different worlds, respectively"?
"That's what it is, another world time world, maybe it's like a parallel world, I might be dragged by Takako and come here," Kikuzo said.
"As I talk about something like this, it seems that the continuation of the story has just begun. Until just a while ago, I was talking to Mr. Kikushi here."
"Yeah, I was talking to Takako and I woke up in this world as I realized that it is on this chair in this garage, and I realized that the world is different"
"What is" another world time world "?" Takako asked.
"Saying, for example," parallel universe ", it is the universe on another time axis that is progressing at the same time.I feel like I'm coming back and forth from this parallel universe for some reason There is nothing wrong with the name and circumstances, but something is different little by little.Time is flowing in a direction that is impossible in the universe of the time axis that was up until a while, , I felt it was instantaneously moved to another parallel universe. "
"It's about moving around the time axis, that's happening to me and Kikuro-san, so my world is different from Kikuzo's world, so it's not over yet."
"Yeah, I have not finished yet, in the world there have been disasters all the time already.In the world, human beings are beginning to be at the mercy of nature without being able to do anything."
"Well, if you moved to this world, your family may be saved"
"Yes, I may be able to go to a different future, my family absolutely can not die.I know how I passed away.I know if I can redo, I will go to a different future"
"Did you tell that family to your family?"
"No, I will not talk to my family, because it seems weird and I do not believe it."
"Well, but if you really can do that, it is true that there is a cause and the result is there, but in the meantime it may be that another factor adds to another result It exists at the same time on each time axis "
"It is when I did it and when I did not do it.With the same" seed ", the result is different when I did water and soil and not doing anything.The result of doing water is a new factor. It will be a factor that did not do, and we will reach different results. "
"Why does it move on a different time axis? I think that it is common sense to have one time axis"
"Oh yeah, just thinking about it, there will be only one time axis. Since I used to have such a feeling, I was thinking about parallelism and such things in various ways, but that is related to" relevance " Changes in the results of individuals will not end with changes in the results of that individual alone and will surely change to the surrounding environment because humans and societies are changing in "relevance" Personal change also affects the surroundings, so we need a number of different world time horizons at the same time.The individual who has changed can not be on the time axis anymore, Move to the axis, so that the world will change "
"I think that it is an interesting way of thinking even though it is not definite fact.It seems that the fact of historical fact that the world changes instantly also seems to be in the past.When my feeling is different from the time axis of the universe There is also a feeling that it is one time axis "
"I do not mind having a variety of senses, of course I think that there is a sense that the time axis is one, but that is a problem of feeling, because it has little effect on facts. However, while human beings continue to make factors that make the world unsustainable, the other may be creating a factor that makes the world sustainable. Sowing both "seeds" at the same time It is in the fact that the world can be changed by any change of something, and that is included in what is not aware of.The "good seed" is not such a thing I think it's cool. "
"Does that mean that" good seed "is included in what you do without consciousness?"
"For example, I think that things that can not be manipulated by consciousness are instincts, the internal organs are also moving instincts, and most of human beings are unconscious and instincts are moving If we assume that humans are naturally derived creatures There should be a sense of "go home to nature" among instincts and unconscious, I think that sense is "leaving a" good seed "."
"That is also an interesting way of thinking, but it seems like there are various hypotheses in" parallel space "and" parallel world. "Anyway, is not that the world one?"
"This is not my world, I am experiencing this era anymore, and in this world this era was not like this"

"Why does time slip happen? What has I done in the future ahead 11 years and how did Mr. Kikuchi come to this past world?"
"As soon as I get it I do not get an answer, of course it is not definitive, but it seems that it will take time to reach somewhat core-like things, whether time slips happen ..."

Takako saw Kikushi thinking in, and once again looked outside from the garage.
The scenery where everything was groomed was spreading. Everything on the roads, parks and buildings was being kept in something.
"I went on a different time axis and experienced it, I have it as a memory, I am obviously changing, maybe this world is not my original world?" Takako thought so while watching the street tree trekking in the wind.


種 第11話 Seed Episode 11




第11話


重くて湿った雪が地面に堆積していく。そんな夜はなるべく大きな広葉樹の木の枝に登って眠ることにしている。そうすれば堆積していく雪に埋もれることもない。湿った雪は体温で溶けて全身の毛を湿らせる。明け方には湿った毛が凍りつき、寒さで目が覚めてしまう。大きな広葉樹は枝葉が屋根になり、枝に登っていれば雪に埋もれることもない。それに狼に襲われることもない。
あたしは安心して眠ることができる。

日が落ちて気温が下がると動く気力も無くなってくる。あたしは寝床の枝に登り、幹にもたれて体を丸める。顔や手足を冬毛の中にしまいこんで目を閉じる。
やがて世界が凍り始める。水分は液体であることをやめて、固い氷の結晶になっていく。
生き物は皆、眠っている。そしてじっと朝を待つ。

世界が白々と明るくなり始めると、あたしの毛はそれを感じてそのエネルギーを受け入れ始める。凍った毛がキラキラと光る。あたしは身震いを大きく一つして、全身の氷をふるい落とす。氷は湿り気を残さず、バラバラと体から剥がれ落ちる。
あたしは太陽の方を向いて、そのまだ弱々しい光を浴びる。
世界が明るくなるにつれて徐々に気温が上がっていく。あたしは動く気力が戻ると枯葉を集めて火を起こす。「もう少しエネルギーが欲しいんだ」枯れた枝葉は小さな火をつくり、じんわりと手のひらを温める。僅かな枯れ枝から小さなエネルギーをもらう。

「旅に出よう」とあたしは思いつく。しばらく客人も来ない。雪に閉ざされた世界もいいが、たまには南の大陸の方に行ってみよう。時間と場所を移動して、人間の世界を見てみよう。

あたしは次の瞬間には大きなマングローブの根元にいる。足元には綺麗な川が流れている。手をつけてみるとほんのりと温かく感じる。体は灰色に変化している。
人間の村は山々のその先にあるように感じる。「しばらく尾根伝いに歩いて山をいくつか越えることになりそうだな」 あたしは川の水で喉を潤すと深い山へと分け入って行く。「奥の方の山の標高はおそらく2000mを超えている。そうなると気候も随分と違うんだろうな」あたしは灰色の体で大丈夫かと少し考える。「気温が下がれば冬毛もまた生えてくるだろう」あたしは呑気にそんな風に思って、山肌を駆け上がる。湿った重い空気が全身を覆う。「空気が違う」とあたしは思う。






Episode 11


Heavy and damp snow accumulates on the ground. Such a night I am going to sleep as climbing the branch of the tree of the broad-leaved trees as much as possible. Then it will not be buried in snow accumulating. Moist snow melts at body temperature and moistens the whole body. Damp hair froze on dawn, and awakens with cold. Big broad-leaved trees have branches and leaves as roofs, and climbing branches will not be buried in snow. Neither is it attacked by a wolf.
I can sleep with confidence.

When the sun is falling and the temperature goes down, the energy to move also disappears. I climb the branch of the bed, and lean against the trunk and round the body. Put your face and limbs in the winter hair and close your eyes.
Eventually the world begins to freeze. Moisture ceases to be a liquid, becoming a solid ice crystal.
Every creature is asleep. And wait for a morning peacefully.

When the world begins to brighten brightly, my hair feels it and begins to accept that energy. The frozen hair shines glittery. I greatly shuddered and sifted the whole body of ice. Ice does not leave humidity, falls apart from the body and falls apart.
I turned towards the sun and took its still weak light.
As the world gets brighter, the temperature gradually rises. I collect the dead leaves and cause a fire when the moving energy returns. "I want a little more energy." The withered branches and leaves make a small fire and gently warm the palm of your hand. We receive small energy from a few dead branches.

I can think of "Let's go on a trip". A guest does not come for a while. A world closed to snow is also nice, but sometimes let's go to the continent of the south. Let's move through time and place and see the human world.

I will be at the base of a big mangrove next moment. A beautiful river flows at your feet. I feel a little warm when I put my hands on. The body has changed to gray.
The human village feels like it is beyond the mountains. "It seems that it will be going to cross some mountains by walking on the ridge for a while." When I rinse my throat with the water of the river, I go into a deep mountain. "The altitude of the mountain in the back is probably over 2,000 m, so the climate would be quite different." I think a bit whether the gray body is OK. "When the temperature goes down, winter hairs will also grow again." I feel sweetly that way, running up the mountain ridge. Damp heavy air covers the whole body. I think that "Air is different".

種 第10話 Seed Episode 10




第10話


「貴子さん!」
コンコンとドアを叩く音がする。貴子はぼんやりとその音を聞く。夢の中でその音は鳴っているようだった。
「貴子さん! お昼ができてますよ。食堂に来てくださいね」

小南さんの声だ。
コンコン。 ノック。 ふと目覚める。貴子は鏡の前で眠っていた。

「貴子さん!」と小南さんが呼んだ。

「はあい。すぐ行きます。ちょっとお風呂に入っていたの!」と貴子は返事をした。
「よかった、昼寝でもしてるんじゃないかと思いましたよ。お昼ができてますよ、お味噌汁が冷めないうちに来てくださいね」とドアの向こうで小南さんが言って、バタバタと廊下を歩いて行ってしまう音がした。

ここはどこなんだろう? 元いた世界に戻ったんだろうか? 部屋はもと通りになっている。窓ガラスも割れていない。 私の世界だ。

じゃあさっきまで居た世界は何なんだろう? 未来の世界。 菊蔵と言う男がそこにいた。確か近所に住んでいるはずだ。この世界にもいるんだろうか。

携帯で日付を確認してみる。2018年9月6日。元の世界だ。季節はまだ夏だ。窓の外では蝉が鳴いている。
私は喫茶まちこでコーヒーを飲んでから、部屋に戻ってシャワーを浴びたんだ。
そして鏡の中の世界に行った。

それから未来に行き、また元の世界に戻ってきた。

貴子は部屋の暑さのせいで、自分が裸だということに気づくまで少し時間がかかった。洋服ダンスには元のまま自分の服が並んでいた。すぐに服を着て窓を開けた。

街は倒壊した家もなく、車の行き交う音も聞こえる。元どうりの世界だ。何も変わっていない。
何がどうなっているのかわからないが、とりあえず元に戻ったんだ。

貴子はスリッパを履いて部屋を出た。食堂の方からは数人の子供達と職員の話し声が聞こえる。
「9月6日の午後」と貴子は呟いた。未来の世界では小南さんの献立日記は今日で終わっていた。このお昼ご飯の献立を最後に。今日、これから、何かが起こるのだろうか。

食堂では食事が始まっていた。平日の昼食なので登校しない子供たちと数人の職員がいるだけだ。
貴子が来たのを見て「お味噌汁注いできますね」と小南さんが言ったが、「自分で注いできます」と言ってキッチンに行った。
キッチンから見える庭も元の通りだった。吹き溜まりもなく、草は適当に刈られていて、木も手入れされていた。

「もと通りだ」

貴子は食器棚からお椀を出して、鍋からお椀に味噌汁を注いだ。

食堂に行くと皆が食事をしていたが、チッチの姿が見えなかった。
「チッチは今日は学校に行っているの? 朝は行かなかったと思うんだけど」と貴子は小南さんに聞いた。
「チッチくんは昼前に、ご飯いらないって言って出かけて行きましたよ。ギター担いでいましたから、音楽の練習にでも行ったんだと思いますけど」と小南さんが言った。
「そうなのね」と貴子は自分に言うように言った。
「どうかしましたか?」と小南さんが言った。
「いえ、大丈夫です。なんでもありません」と貴子は言った。

「菊蔵という男が居るか確かめてみよう」。貴子は食事が終わると記憶をたどって菊蔵の住処へ行ってみた。「確か、神社の近くの掘り込みのガレージがある家」

景色はまともすぎて、それがまともなのかどうなのか、一瞬わからなくなった。ついさっきまで、自然に飲み込まれていこうとしている住宅街にいたのだ。アスファルトはひび割れて雑草が生えていた。神社や公園は森になっていた。
「私の世界は全てが手入れされている」 獣で過ごした時間と、荒れ果てた未来を経験した後では、今のこの世界はとても不自然な世界のように思う。
貴子は自分の感覚が、もう以前の感覚とは違ってしまっていることがわかった。 「私はとんでもない世界にいるのかもしれない」

記憶の通りに道をたどって行くと、見覚えのあるガレージが見えてきた。ガレージの前にはアロハシャツを着た老人が立っていた。遠目から見てもそれが菊蔵だということがわかった。
貴子に気づいて菊蔵は手を振った。
「私のことを知っているのかしら? この世界では、まだ一度も会ったことがないのに」
貴子は声の届くところまで近づくと「菊蔵さん?」と声をかけた。
「貴子さん、来るのを待っていたよ。どうやら俺も時間を移動できるみたいなんだ。貴子さんみたいに未来をいろいろ見て、この時代に戻ってきた。まあガレージでお茶でも入れるよ、少しくらい時間はあるだろう?」菊蔵はそう言って、ガレージに並べられたキャンプチェアーを貴子にすすめた。






Episode 10


"Takako!"
I heard a knock on the conch and the door. Takako listens to the sound vaguely. The sound seemed to be ringing in my dream.
"Takako! Lunch is ready, please come to the cafeteria."

It is Mr. Konan's voice.
Concon. Knock. Suddenly awaken. Takako was asleep in front of the mirror.

"Takako!" Was called by Konan.

"Ai, I will go soon, I was taking a bath for a while!" Takako replied.
"I was glad, I thought that I was doing a nap, I am having lunch, please come before the miso soup does not cool," Konan says at the door and walks in the corridor There was a sound to go.

Where is this place? Did he return to the original world? The room is in its original condition. The windowpane is not broken. It is my world.

Well then what is the world in the middle? The future world. A man called Kikuzo was there. You surely live in the neighborhood. I wonder if there are also in this world.

I will check the date on the mobile. September 6, 2018. It is the original world. The season is still summer. Outside the window cicadas are singing.
I drank coffee at tea ceremony, I went back to the room and took a shower.
And went to the world inside the mirror.

Then I went to the future and came back to the original world.

It took a while before Takako realized that he was naked because of the heat of the room. My clothes were lined up in the original wallet dance. I immediately put on my clothes and opened the window.

The town has no collapsed house, and the sounds of cars are heard. It is the original world. Nothing has changed.
I do not know what is going on, but for the time being I went back.

Takako left the room with slippers in it. From the cafeteria you can hear the talk of several children and staff.
Takako muttered "September 6 afternoon". In the future world Konan's menu diary ended today. At the end of this lunch menu. I wonder if something will happen from now on.

Meals were beginning in the dining room. Since we have lunch on weekdays, there are only children and a few staff who do not go to school.
Konami said, "I can pour miso soup," when I saw Takako came, I went to the kitchen saying "I can pour it myself".
The garden seen from the kitchen was also the original street. There was no puffing, the grass was properly mowed and the trees were being groomed.

'It is in stark '

Takako put out the bowl from the cupboard and poured miso soup into the bowl from the pot.

Everyone was having a meal when I went to the dining room, but I could not see the appearance of Zitch.
"I think Titchi is going to school today, I think he did not go in the morning," Takiko asked Mr. Konan.
"I told him that Titchi told me that he did not need rice before noon, because I was playing guitar, I think he went even to practice music," Konan said.
"That's right," Takako told him to say to himself.
"What's the matter?" Konami said.
"No, it's all right, there is nothing," Takako said.

"Let's see if there is a man named Kikuchi." Takako traced his memories and went to Kikuchi 's residence when the meal ended. "Indeed, a house with a dug-up garage near the shrine"

The scenery was too decent, I could not understand for a moment whether it was decent. Until just a while ago, I was in a residential area where I was about to be swallowed naturally. The asphalt was cracked and weeds were growing. Shrines and parks were forest.
"My world is being groomed everything" After experiencing the time spent in beasts and the desolated future, I believe this world is like a very unnatural world.
Takako found out that his feelings were different from previous feelings. "I may be in a ridiculous world"

Following the way as I remembered, I saw a familiar garage. An old man wearing an aloha shirt was standing in front of the garage. Even from a distance perspective it turned out that it was Kikushi.
I noticed Takako and Kikuzo waved her hand.
"Do you know me? I have never met in this world yet."
As Takako approached the place where the voice could reach, he said "Kikushi-san?"
"Takako-san, I seem to be able to move time, apparently I have come back to this age as I watched the future like Takako-san, I will put in some tea in a garage well, a little about time Is there any? "Kikushi said so and Takako recommended a camping chair arranged in the garage.

種 第9話 Seed Episode 9




第9話


「動物でも人間でもないもの」とサリは言った。「僕たちの村ではその生き物のことを『獣』って呼んでいるんだ。今でも時々、見かける村人もいるんだけど、住処とか生態とかは謎なんだ。とても古くから人間と共生しているみたいなんだけど、姿を見かけるのはほんのたまにしかないんだ」
「でもそういう生き物がいるんだね? この山に」とサカウエは聞いた。
「うん、ずっとそういう風に伝えられてきた。中にはその獣と喋ったっていう言い伝えもあるんだ。ここ最近は誰も見かけていないけどね。10年ほど前に狩りに出ていた村人が、たまたま見かけたらしいんだけど、その時は接触はしなかったみたいなんだ。ただ姿を見かけただけなんだ」とサリが言った。
「どんな姿をしているんだ?」とサカウエは聞いた。
「毛は真っ黒で、冬になると真っ白になるんだ。冬毛になるみたいなんだ。人間みたいに2本足で歩くけど走る時は時々4本足になるんだ。大きさは人間より一回り大きい感じで、結構すごい牙がある。爪も鋭いらしい」とサリは言った。
「全身毛むくじゃらの人間みたいなもんなんだな。そういうのは進化の過程で枝分かれした『種』が生き残っているとも言われているけど」とサカウエは言った。
「そうだね、そういう『種』はもしかしたらいるのかも知れない。でもこの山に住んでいる獣はそういうのとは全然違うんだ。彼らは素早くて、とても賢いようなんだ。気配は人のような気配がするらしい。誰かいるって感じみたいなんだ」とサリが言った。

レイがお茶を沸かして運んできてくれた。「採れたてのハーブだよ。さっきサカウエと摘んできたものだよ」と言ってサリとサカウエが座っている木のベンチの淵に置いた。

ふんわりとハーブの香りが漂った。「いい香り」とサリが言った。「ありがとう」とサカウエが言った。






Episode 9


"Something is neither an animal nor a human," Sari said. "In our village we call that creature" a beast. "Even now, there are also villagers that sometimes seem to be, but there are living habits and ecology, etc. It is a mystery with human beings very long ago It looks like it's only a few occasions to see the appearance.
"But there are such creatures?" I heard Sakae on this mountain.
"Yeah, I've been told by that kind of story, there is a legend that some people talked with that beast, although no one has been seen recently, recently villagers who were hunting about 10 years ago It seems that you happened to see it, but it seems you did not make contact at that time, but I just saw the appearance, "Sari said.
"What kind of figure do you see?" Sakae asked.
"The hair is black, it gets pure white in the winter, it looks like it gets winter hair.I like walking with two legs like a human being, but when I run I sometimes get four legs.The size is more than a human being There is a fairly great fang with a big round feeling, nails are also sharp, "Sari said.
"It's like a whole-body hairy human being, which is said to have survived the" seeds "that branched in the process of evolution," Sakae said.
"Yeah, that kind of" seeds "may be in danger, but the beasts that live in this mountain are completely different from them.They are quick and very smart.The sign is like people It seems like something like it seems like someone is there, "Sari said.

Ray brought us tea and brought it. "It's a freshly picked herb, I picked it with Sakae a while ago," and Sari and Sakae put them on the edge of the sitting tree bench.

The scent of fluffy and herbs drifted. Sari said, "A nice scent." "Thank you" said Sakae.

種 第8話 Seed Episode 8




第8話


「例えばケニー・バレルのソロみたいなもんなんだよ」と菊蔵は言った。「ケニーは恐ろしく早弾きもできるけど、それよりも雰囲気を大切にするんだ。曲が品を保ったままであることを一番のこだわりにしている。あくまで癒しの雰囲気にこだわるんだ。あるいはWarren Wolfは鉄琴の音を使う。いくら激しさを増しても鉄琴の音は柔らかいままだ。jazzのミュージシャンは皆、激しさを内に秘めながら表面に出すのは柔らかさなんだ。それがjazzなんだと思うんだ」
貴子と菊蔵は i phone から流れる音楽を聴きながら味噌汁を食べた。菊蔵が言うように、会話をもっとリラックスして楽しんでもいいのかもしれない。今は何かを焦っても、そこにメリットは何もないのかもしれない。それに音楽はとても心地よい。
「スマートフォンがよく動いているわね、どこかに電源でもあるの?」
「太陽光発電だよ。都会には太陽光パネルがいたるところにあるんだ。蓄電池を備えている家なら電源はいつでも使える。ついでに電気自動車も使える。俺も何台か確保している。運転ができるなら一台使うといい」
「それは本当なの? それならすごく助かる。山まで歩いて登らなくてもいい。道がまだ通れたらの話だけど」
「山間部の道は当然荒れている。四輪駆動車なら通れるかもしれないが、普通車では少し手こずるだろう」
「でも徒歩のことを考えると、随分と時間も体力も節約できると思う。ありがとう」
「太陽光発電のシステムが生きている間は電気も使えるけれど、蓄電池の寿命が来たらそれも使えなくなる。電気工事とかの知識があればなんとかなるのかも知れないけど、そっちの方は全然わからないからな」と菊蔵は言った。
「電気を使わなくても、十分に人間は生きていけるわ。でも本当に電気って便利なものなのね。それと引き換えに多くのものを失ったとは思うけれど」
「道具も使いようだ。活かしてやれば道具も喜ぶ」
「でも不思議ね、物質は幻だとわかっていても、それに頼ってしまう自分がいる」
「人間は野生動物じゃない。道具があったほうが生きやすい。そういう方向に人間は進化したんだ」
「そう、そのことを話したいと思っていたの。進化について。人間は間違った方向に進化してしまったんじゃないかしら?」
「俺は思うんだけど、進化に正しいも間違いもないと思うんだ。進化はただの適応だよ。その時その時に適応しようとしているだけのことなんじゃないかな。道具を必要とする進化は、結果として科学を生み出した。それも必然なことだったんだと思うよ」
「皮肉なものね。進化って両刃の剣のようなものなのかもしれない。進化によって、自らを苦しめるようになることもある。学ぶのね。失敗をして。こんな世界になったことも必然なことなのかもしれない」と貴子は言った。
「結果論としてはそうかもしれないな。これを学びとして捉えるかどうかは、これも個体差によるかもしれない」と菊蔵は言った。
「もしかしたら脳の進化というのは、失敗から学ぶということを前提としているんじゃないかしら。まあ、個体差もあるかもしれないけれど、『学ぶ』ということ自体を人間は求めているんじゃないかと思うの。自分の不完全さを思い知るのは人間だけなんじゃないかしら」と貴子は言った。
「確かに、動物は自分の不完全さなんて考えもしないだろうね。人間よりも欲望に素直だし、本能的だしね。でもなぜ人間は『学ぶ』なんて面倒くさいことをしなければいけないんだろう?」
「『学ぶ』ことの目的よね。これも確定的なことではないけど、自己を知りたいということなのかもしれないわ。自分っていったい何なんだろう、とかね。生まれて死ぬことの意味とか。『思考』を発達させた理由は、起こっている事柄に意味を見出す必要があったからなんじゃないかしら? あるいは起こっている事柄の意味を考え始めたか」と貴子は言った。
「例えばそれは、世界が放射能に汚染されてしまった事柄について意味を見出すということなのかな?」と菊蔵は聞いた。 「そうね、それに意味を見出すことで人間は何かを納得をするのかもしれない」と貴子は言った。
「『何かを納得する』って表面的な事柄じゃなくって、もっと深いところの意味みたいなものの事かい?」
「深層心理というか、核の部分というか、そんなものの事よ」貴子はそう言って、味噌汁の野菜を食べながら自分の今言った言葉のことを考えていた。「たぶん、そんなことを考えようと思っている人は、そんなに多くはいないのかも知れない」と貴子は思った。

「人間はなんのために生きているんだろう? 思考して、何か答えを得るために生きているんだろうか?」と菊蔵は言った。
「それか、ただ生きているだけかもしれないわね。動物のように、本能と欲に支配されたまま。深い思考なんて脇に置いてね」と貴子は言った。
「『思考』していないっていうことなのか?」
「『深い思考』っていうことだけど。何か、かつてのシステムの中に『深い思考』をさせない罠が仕掛けられていたのかもそれない。意識を操られていたのかもしれない、長い年月をかけてね」と貴子は言った。
「街が自然に飲み込まれていくのを見ていると人間が大切にしていた『常識』が何の役にも立たないっていうことがよくわかるよ。『常識』は人間社会だけでのルールのことだ。『人間だけが快適に生きる世界』に基づいたルールだ。何て陳腐なルールなんだろう。人間だけが快適に生きられる世界が出来ると、本気で思っていたんだろうか? そんな世界はありえない」と菊蔵は言った。
「人間の脳は洗脳されやすい。科学や養育は人間の『洗脳』を先ずはじめに研究したんじゃないかしら。それは管理者にとっては最優先の事柄だったと思うの」と貴子は言った。
「それは言えるかもしれない。日本の文化も、戦後大きく変えられた。生活も食事も西洋風に移行していった。着物が洋服になった」と菊蔵が言った。
「不自然な事柄ね。強引で、強制的」と貴子は言った。
「以前のシステムは、自然のシステムとは大きくかけ離れたシステムのことだ。その結果がこれだ。世界は終わろうとしているのかも知れない。何もかもが持続不可能になった。当たり前だけどね」と菊蔵が言った。
「この放射能が蔓延した世界でどうやって生きていけばいいんだろう」と貴子は思った。




Episode 8


"It's like Kenny Barrel's solo," Kikuro said. "Although Kenny can fly awfully quickly, but also cherish the atmosphere more than that.The first thing that songs keep keeping goods is that they stick to the healing atmosphere to the last.Warren Wolf I use the sound of the iron harp, and the sound of the iron oyster remains soft even if I get more fierce.The musicians of all jazz are soft to put out the violence inside the surface while it is jazz I think that's what. "
Takako and Kikushi ate miso soup while listening to music from i phone. As Kikuzo says, it may be good to relax and enjoy the conversation. Even now I am in trouble, there may not be any merit there. Besides, music is very comfortable.
"Your smartphone is working well, is there a power supply somewhere?"
"Solar power generation, solar panels are everywhere in the city, you can use the power at any time if you have a storage battery, you can also use electric cars, I also have secured a couple of them. You can use one if you can do it. "
"Is that true? If that is the case, it will be a great help, you do not have to walk up to the mountains and climb up if the road can still pass."
"The road in the mountain area is obviously rough, although it may pass if it is a four wheel drive car, it will be a bit handy for ordinary cars."
"But thinking about walking, I think I can save time and physical strength. Thank you.
"While the photovoltaic system is alive, you can use electricity but it will not be usable if the life of the storage battery comes up. Kana said, "Kikuro said.
"Even without using electricity, humans can live adequately, but electricity is really useful, but I think that I lost a lot of things in exchange"
"The tools are useless too, please use the tools if you make good use"
"But it is strange, even if you know that the substance is a vision, there is yourself who relies on it."
"Human beings are not wild animals, it is easier for people to have instruments to live, people have evolved in that direction."
"Yes, I wanted to talk about that. About evolution ... Humans have evolved in the wrong direction?"
"I think, but I think that there is neither correct nor mistake in evolution, evolution is just an adaptation, it's just trying to adapt at that time. Evolution that requires tools requires a result I created science as a factor, I think it was inevitable. "
"It is ironic ... Evolution may be like a double-edged sword, sometimes it makes me to suffer himself through evolution, learning.Learn.Take a mistake.Not to have such a world It may be inevitable, "Takako said.
"As a result theory may be so, whether this is taken as learning or not may be due to individual differences," Kikuzo said.
"Maybe the evolution of the brain presupposes learning from failure." Oh well, there may be individual differences, but human beings are not asking themselves "to learn" I wonder if it is only human beings to know their imperfections, "Takako said.
"Indeed, animals will not think of their imperfections, they are more honest and deserved than humans, they are instinctive, but why do humans have to do bothering to" learn " ? "
"The purpose of doing" learning. "This is not definitive, but it may be that you want to know yourself, what exactly is yours, such as the meaning of being born and dying Takako said, "Why did you develop" thinking "because you needed to find meaning in what is happening, or did you start thinking about the meaning of what is happening?"
"For example, is that the meaning of the things that the world is contaminated with radiation?" Kikushi asked. "Well, it may be that humans convince something by finding meaning in it," Takako said.
"Does" convincing something "are not superficial things, are they things like the meanings of deeper things?"
Takako said so, thinking of the words he said now while eating vegetables in miso soup, saying, "Deep psychology, or part of the nuclear?" "Perhaps, there may not be so many people thinking about such a thing," Takako thought.

"Why are we living for human beings? Are they alive to think about and get something to answer," Kikuzo said.
"Or maybe it 's just alive, just like being an animal, left as ruled by instinct and greed, put aside deep thinking," Takako said.
"Is not it" thinking "?
"It is" deep thought. "It may be that there was a trap on something that did not allow" deep thinking "in the former system, perhaps it might have been manipulated consciously, for a long time Take over, "Takako said.
"When you are watching the city being swallowed naturally, you can easily understand that" common sense "that man cherishes is not useful for anything." Common sense "is a rule only for human society It is a rule based on "a world where only human beings live comfortably." What is obsolete rule What kind of world did you realize that only human beings can live comfortably? There can not be, "Kikuji said.
"The human brain is easy to be brainwashed, I think that science and childcare initially studied human" brainwashing "first, I think that was the top priority for administrators," Takako said.
"It could be said that Japanese culture has also been greatly changed after World War II, both life and meals have shifted to Western style, Kimono said," Kimono became clothes. "
"Something unnatural, forcible, compulsive," Takako said.
"The previous system is a system that is quite far from the natural system, the result is this, it may be that the world is about to end, everything has become unsustainable, but of course it is natural Kikushi said.
Takako thought, "How can we live in a world where this radioactivity has spread?"

キャンプ 丸山県民サンビーチキャンプ場 ハンモック泊

 

兵庫県にある丸山県民サンビーチキャンプ場でハンモック泊をしてきました。

寒さにどれくらい対応できるのかとか、タープの張り方の工夫をいろいろしています。


種 第7話 Seed Episode 7




第7話


ユウはできるだけ簡単なコード進行で曲をつけようと思った。アマの歌は日本語のようでも言葉にはなっていない。音遊びだ。
Gの循環コードを基本に創ってみる。

あかはなま
いきひにみうく
ふぬむえけ
へねめおこほの
もとろそよ
をてれせゑつる
すゆんちり
しゐたらさやわ

五七五の音階だ。
単純なメジャーの巡回コード。

部屋のベッドに座ってアコースティックギターを抱えながら色々と試してみる。
最後の七つの音を収めるのに苦労する。
少しだけ音階に変化があってもいいかもしれない。変化しすぎないように少しだけアクセントに違うコードを入れてみる。
大体の曲の構成ができると、とりあえず録音してみる。何度か聴き返しながら、曲の構成を変えてみる。
明日、皆んなとスタジオに入ることになっている。あとはセッションしながら仕上げていけばいい。
「楽しみだな」ユウは自分のつけた曲を皆んなが色付けしていくことを考えると嬉しくなる。音楽は一人でやるのもいいけれど、バンドは皆んなの個性が絡み合って独特のアレンジが出来上がる。自分一人だけでは想像もできなかったように進化していく。

コード進行と音階はただの種だ。発芽した曲はメンバーの個性で様々な葉や花を咲かせる。皆んなが育てた曲は苗木のように一つの命を宿していく。
苗木は演奏のたびに、その姿を変えていく。

音楽は植物に似ている。

根っこがあり、幹から枝葉が茂り、花が咲く。そして花はやがて種をつけていく。
その種から、また新たな曲が育っていくんだ。






真知子は久しぶりに街の音楽スタジオに来て少しテンションが上がっていた。
「懐かしい。学生時代によく利用していたわ。ここのスタジオはまだあったのね」
「真知子さんの学生時代って何年前なんですか?」とチッチがふざけて聞いた。
「そんなのずっと前よ」と真知子は言った。「でもわくわくする。アマの歌がどんな感じになったのか、聴くのが楽しみだわ」
「なんで来てるのかなー。バンドのメンバーでもないのに」と美和が言った。
「いいじゃない、見学くらい。聴いてみたいのよ、あんたたちのアマの歌」と真知子が言った。

四人はそれぞれの音を仕上げていった。
自分の音。
スネアの音の高さ、ギターの歪み具合、ベースのエッジ感、ボーカルのイコライジング。
自分の音が出来上がると、四人はそれぞれの色を調整していく。
タナベのギターの色にチッチが少し寄り添うようにエッジを調整する。タナベはユウの声に合わせて歪み具合を少しいじる。
美和はみんなの音が出来上がっていくのをタムを回しながら聴いている。
「ロックだねえ」と美和は独り言を言う。


四人はスタンバイができると美和を見た。曲は、ドラムスが根っこみたいなものだ。そこからベースが幹をつくり、ギターが枝葉を茂らせて、ボーカルが花を咲かせる。
美和は自分に皆んなの視線が集まったのを確認した。「どれぐらいのテンポで行く?」
「ゆっくりめ」と言いながらユウが指先でテンポを刻む。
美和はハイハットでそのテンポを確認しながらバスドラムとスネアドラムを重ねていく。

タナベがオープニングソロを弾き始めた。
チッチは慌ててそれにコードを合わせた。
「オープニングソロなんて、タナベさん粋だなあ」チッチはタナベのソロに合わせてベースのフレーズを乗せていく。
「歌うようなギターのソロには、歌うようなフレーズが合う」
タナベはチッチがメロディアスなベースラインを弾き始めたのでもうワンフレーズ、ソロを延長した。
ギターとベースのダブルソロがドラムスに支えられてスパイラルを描く。
それは延々と続くように思えたが、2フレーズが終わると、ユウが始めの七文字の音を歌い始めた。

あかはなま

音がユウに集中する。花が開花していく様子を皆が見守る。

音階は 言葉と重なり 歌になる。

木が成熟していく。

しゐたらさやわ

もう一度ギターのソロになる。優しいソロだ。歪んだいつものタナベの音だが、ピックではなく指で弾いている。音は柔らかなタッチで拡散していく。

たっぷり2フレーズギターのソロが終わると、もう一度ユウがソロをとる。

あかはなま
いきひにみうく
ふぬむえけ
へねめおこほの
もとろそよ
をてれせゑつる
すゆんちり
しゐたらさやわ

歌が終わると、ガンガンガンと美和がハイハットでアクセントを入れた。

「盛り上げていくよ!」
美和のサインだ。

チッチは跳ねたアクセントをフレーズに忍ばせる。
タナベがピックを弾かせる。

音は一気にロックし始める。
「私たちはこうでなくっちゃね!」
音がロールする。
渦が龍のように空に昇る。

あかはなま
いきひにみうく
ふぬむえけ
へねめおこほの
もとろそよ
をてれせゑつる
すゆんちり
しゐたらさやわ

もう一度ユウがソロをとった。
黒い感じが演奏には合う。


10分かそこらの演奏だった。
「あんたたちってなんでもそんなふうになるのね!」と真知子は大笑いしながら言った。「でも最高だった!」
四人も皆んな笑顔だった。顔を見合わせて「いいね!」と言った。
「いい感じ!」ユウは最高のアレンジが出来上がったと思った。






Episode 7


Yu thought about putting the song with as simple chord progression as possible. Even though the songs of Ama are like Japanese, it is not a word. It's a sound play.
Let's create based on the circulation code of G.

A kana
Ikihinami club
Bathington
Horn's okay's
Even solemnly
Let's make it happy
Retirement
If you do it SAISA

It is a scale of 575.
Cyclic code of a simple measure.

Sitting in the bed of the room and trying variously while holding an acoustic guitar.
I struggle to put the last seven notes.
It may be good for a slight change in the scale. I try to insert a slightly different code for accent so as not to change too much.
If you can structure almost the song, try recording for the time being. While listening several times, try changing the composition of the song.
I am planning to enter the studio with everyone tomorrow. Then finish as you go through session.
"I'm looking forward to it" Yu will be pleased if everyone tries to color the songs he attached. Although it is okay to do music alone, the band is intertwined with everyone's individuality and makes a unique arrangement. I will evolve as one can not imagine alone.

Chord progression and scale are just seeds. Germinated songs bloom various leaves and flowers with the personality of members. The songs that everyone raised have a life like a sapling.
Saplings change their appearance each time they play.

Music is like a plant.

There is a root, branches and leaves grow thick from the trunk, flowers bloom. And the flowers will continue to grow seed soon.
From that kind, another song will grow up again.






Machiko came to the music studio in the city after a long absence and a little tension was rising.
"I used to use it nostalgicily during my school days, the studio here is still there"
Titchi playfully asked, "How long ago was Michiko's student days?"
"Before such a long time ago," Makiko said. "But exciting, I'm looking forward to listening to what the songs of Ama have become."
"Why are you coming, I wish you were not a member of the band," Miwa said.
"It's not nice, it's about a tour, I'd love to listen, your songs of ama", Makicho said.

Four people finished each sound.
My own sound.
Sound height of the snare, distortion condition of the guitar, edge feeling of the base, equalizing of the vocal.
When their own sound is completed, the four people adjust their colors.
Adjust the edges so that the lattice gets closer to the color of the guitar of Tanabe. Tanabe changes his condition slightly according to Yu 's voice.
Miwa is hearing everyone's sound is turning while turning the tom.
"Rock neeze" and Miwa say soliloquy.


Four people saw Miwa if they could stand by. The song is like drums roots. From there the base makes the trunk, the guitar grows branches and leaves, the vocals bloom.
Miwa confirmed that everyone's eyes gathered to himself. "How long will you go with tempo?"
Yu will inscribe the tempo with his fingertip while saying "slowly".
Miwa will overlay the bass drum and snare drum while checking the tempo with the hi-hat.

Tanabe began playing the opening solo.
Titch hurriedly matched the code to it.
"Tanabe is strange like an opening solo." Chichi carries a phrase based on Tanabe's solo.
"The singing phrase is suitable for a singing solo guitar solo"
Tanabe extended the one phrase, solo as Titch began playing melodic baseline.
Guitar and base double solos are supported by drums and draw a spiral.
It seemed to be going on and on, but when two phrases were over, Yu started singing the beginning seventh letter.

A kana

The sound concentrates on Yu. Everyone watch the flower blossoming.

The scale overlaps words and becomes a song.

The tree matures.

If you do it SAISA

I become a guitar solo again. It is a gentle solo. It is the usual distorted sound of Tanabe, but it is playing with fingers instead of picks. The sound spreads with a soft touch.

Plenty of phrase When solo of guitar finishes, Yu takes solo once more.

A kana
Ikihinami club
Bathington
Horn's okay's
Even solemnly
Let's make it happy
Retirement
If you do it

When the song was over, Ganggangan and Miwa accented with Hihat.

"I will make it excitement!"
It is a sign of Miwa.

Titch folds the bounced accents into a phrase.
Tanabe makes the pick up.

The sound begins to lock at a stretch.
"We must not do this!"
The sound rolls.
The whirlpool rises to the sky like a dragon.

A kana
Ikihinami club
Bathington
Horn's okay's
Even solemnly
Let's make it happy
Retirement
If you do it

Yu took the solo again.
A black touch fits the performance.


It was about 10 minutes or so.
"All of you will be that way!" Makiko said with a big laugh. "But it was awesome!"
All four people smiled. She looked at her face and said "I like it!"
"Good feeling!" Yu thought that the best arrangements were made.

種 第6話 Seed Episode 6




第6話


「それをやった時と、やらなかった時で、何が違うのか。人間が、自然に対して何かをやった時と、やらなかった時は、結果として大きく違ってくるのだろうか。短期的に見れば大きな違いがあるだろうけど、長期的に見れば、何も違わないと思う。放射能が大量に自然界に拡散されて、被爆した動物は人間も含めて大量に死んだ。海でも山でもね。でも生き残る個体もいる。多様化した生き物は、何か一つの原因だけでは決して死に絶えない。放射能汚染にも適応する個体が出てくる。それまでの環境の中でデメリットだった部分が、環境が変わることでメリットになるんだ。放射能はその個体にとっては大きなギフトだったんだ。進化はそうやって起こるんだと思う」と菊蔵は言った。

またここにも話し始めと、話しの終着点がまるで一致しない人間がいた、と貴子は思った。「菊蔵さん、進化の話しなの? それとも、やった時とやらなかった時の話なの?」
菊蔵はハーブティーを一口飲んでから言った。
「そう話の筋道をはっきり立てて話をしなくてもいいんじゃないかなと思うんだ。話は思考の流れだよ、それはとても自然なことで、無理に変えないほうがいいと思うんだ」
「でもやっぱり会話っていうのは独り言じゃないんだから、相手の思いや思考も考慮する必要があるわ。キャッチボールが成立して、初めてそれは会話っていうんだと思う」
「もちろんそうなんだろうね。俺だって何も考えていないわけじゃない、相手の事も考慮する。進化の話をしないほうがいいなら、それを無理にはしない。ストレートにそう言ってくれればいい。貴子さんは、そういう意味ではすごくストレートな言い方をするね」
「そういう性分なのね。職業的なこともあるかもしれないけれど、会話の中に答えを導き出したいと思うのよ。例えば『やった時とやらなかった時』という話の結論を、会話の中から見つけたいの。セッションによる発見。一人では導き出せなかった新たな発見みたいなもの。そういうことを会話に求めてしまうの」
「俺とはぜんぜん違う感覚だね。俺は会話をもっとリラックスした方向で考えている。答えや結論は不確定なものだと思う。それを導き出しても、それが確定的なことだとは言えないんじゃないかな。俺はやってもやらなくても、長期的に見れば何も変わらないと思っている。自然は、常にあるべき姿に戻ろうとしていると思うんだ。街はどんどん自然に飲み込まれていく。ここも数十年したら森になっているかもしれない」

「人間がいくら自然にインパクトを与えても、自然にとっては、それはそれほど大したことではないってこと?」
「長期的に見ればね。でもその答えも、確定的なことではないと思う。もしかすると、何かが取り返しのつかないことになってしまうのかもしれない。そしてそれは環境にとって、というか、この地球にとって致命的なダメージを与えることになるのかもしれない。想像すればきりがない。世界は、何だって起こり得るんだ」
「放射能が蔓延したこの世界で、生き残る人間もいるのかしら? 耐性みたいなものを獲得して」
「もともとあった耐性が、そういう環境になった時に開花するんだろう。人間の中にも環境に対応していく人がいるんだと思う。遺伝としてそれを子孫に残しながら、今の環境を生き抜くんだ」
「でもそれも不確定な結論なのね?」
「もちろん。もしかしたら人間は死に絶えるかもしれない。それは誰にもわからない。未来自体が不確定だ。何も決まっていない。さっきも言ったけど、何だって起こり得る。時間は続いているものじゃないかもしれないしね」

貴子はタイムスリップしてしまったことを思い出していた。

「時間が続いていないって、私がこの未来に来たことも関係しているのかしら?」
「貴子さんが言っていることが本当なら、それを証明していることになる。時間は続いていないってね。時間が必ず続いているなら、貴子さんはここにはいない、時間軸を踏み外すことはない。だから会話に結論を求めても意味がないとも思う。もっとリラックスして楽しめばいいんじゃないだろうか。娯楽の一つとして」

貴子はそのことについてしばらく考えた。時間が続いているのなら、タイムスリップなんてするはずがない。それなら説明がつくかもしれない。 でもそれも確定的なことではない。

「よくわかったわ。菊蔵さんには結論を導き出すとか、そういうの期待しないようにする。お互いに、それは個性っていうものだものね。無理に合わせる必要もないと思うわ。このままでも割と、会話は成立しているみたいだし」
「そうだな。貴子さんははっきりと言うタイプみたいだから、俺も本音を出しやすい。でも失礼だけど、もう少し柔らかい感じがあるといいと思う。女らしさというか」
「変なこと言うようだけど、私の魂は男性なの。今は女性に生まれているんだけど。そのことも私は思い出したの。だから女性らしいところがあまりないんだと思う」
「そうなのか、俺もそれを考えてたことがある。人間には男性性と女性性が共に備わっていると思うんだよ。俺は女性性が自分の中では多くを占めていると思うんだ。あくまでも精神的な面での話だけどね。子供の頃から男よりも女の方が話しもしやすいし、楽なんだよ、友達になるには。女は感情の生き物だと思う。俺もそういう感じだし」
「良かった。じゃあこういう話は通じるのね。それはとてもありがたい。私ももう少しリラックスできると思うわ。私は感情よりも理論を重んじると思う。説明しにくいけど、揺るぎないものや物事の真理は感情ではなくて理論や法則にあるんだと思うの」
「理論や法則は感情を排した、どちらかというと数学的なものだね。感情は女性的で文学的なものだ。ふわふわしている。数学的なものは硬い。デジタル的とも言えるかもしれない。そして、その男性性には攻撃性も含まれる。女性性にはない『戦う』っていう闘争本能の表れなんだろうけど、男性は女性よりも肉体がタフで強いからね。でもそれが会話の中に混じると、争いごとや諍いの原因になる。会話には女性性を表に出したほうがいいと思うね」
「男性は肉体がタフで強い分、精神は弱いと思うわ。私の知っている人は皆んなそんな感じがする。女性は精神的には男性よりもタフなんだと思う。男性も女性もそういう意味でフェアーなんだと思う。その菊蔵さんの花柄のズボンは女性性の表れなの?」
「それもあるかもしれないが、俺は花柄をカモフラージュ柄というカテゴリーで見ている。緑と茶色のマルチカム柄も花柄も、俺の中ではどちらもカモフラージュ柄なんだ。自然に溶け込むデザイン。自然のデザインだと思う。チェック柄とは対照的なんだ」
「私はチェック柄は割と好きよ。牧歌的な感じがするし、攻撃的なイメージがない。チェック柄を着た兵隊さんなんていないでしょう。迷彩柄はどうしても戦争をイメージしてしまうのよ、感覚として」
「迷彩柄は、柄としては一番自然に近い柄だし、曲線的で見ていて飽きない。それはとても複雑な模様で、柄によってはそれは森そのものなんだよ。森を体にまとっている気分になるんだ。優れたものや美しいものは、時として戦争に利用されることがある。戦いの中で生き残るには、本物の道具や装備が必要だからね」

「戦争はもう起きないと思うわ。もう誰も戦争をしたいとは思わない。一部の企業以外はね。でもそこで働く人も戦争をしたいとは思っていないはずよ。戦争がどういうものなのか、もう皆んな知っているから」
「そうだね。世界からは戦争はなくなった。災害が頻発し始めてからはね。人間はそれどころではなくなった。そんなことよりも、やらなくてはいけないことがあったんだ。生き残るためにね」
「結果として、それは良かったのよね。人間同士争っている暇はないってことで、協力し合わないと生きていけない状況になった」
「災害が『分断』を停止させたんだ。個人主義から全体主義に。災害からの教訓は、分断意識を持った人間は生き残れない、ということだと思うんだ。そして個性はそんな時にとても際立ってくる。何もかもが満遍なく得意な人間よりも、何かに特化して偏った人間の方が専門的なことに突出している。そんな人たちは皆んなの役に立ったんだ」
「役割ということね。ナイフはナイフ。スプーンはスプーン。それぞれに得意なことと不得意なことがある。すべてを備えたカトラリーは無い」
「ナイフは一応すべてを備えていると言えると思う。扱いには注意がいるけどね」
「だんだんマニアックな感じになってきているようだけど、菊蔵さんはどんなお仕事をしていたの?」
「俺は植木屋だったんだ。庭の手入れをしたり、木を植えたりする仕事だよ。ハサミやノコギリ、ナタやナイフが俺の商売道具だった。ハサミやノコギリはとても複雑な道具なんだ。手仕事では作れない。鉄や鍛冶にも精通していなくてはいけないしミリ単位の精巧さも要求される。ナイフは一番シンプルな道具だ。尖った石みたいにね」

貴子は話が大きくずれていると思ったが、初めに何の話をしていたのかを思い出せなかった。 まあいいか、と思った。 女性性に寄りかかってみよう。女性は感情の生き物だ。心に従って生きている。


「できたよ」と言って菊蔵は野菜の味噌汁を茶碗に注いでくれた。貴子はそれを受け取った。野菜がたっぷり入った美味しそうな味噌汁だった。
「とても美味しそう。食べ物をどうしようかと考えていたの。この野菜はどうしたの?」
「庭に畑があるんだよ。それに、この辺りはどこにでもいろんなものが勝手に生えている。山菜も生えているし、野菜は零れ種で野生化している。一人ではとても食べきれない。街で家庭菜園をやっていた庭の野菜が、そのまま繁殖したんだ。場所にもよるだろうけど、食べ物なんて自然に任せておけばいくらでもできるんだって思うよ。農村に行けばもっと豊富に食料はあると思うよ。味噌も醤油もつくればいいしな」と菊蔵は言った。






Episode 6


"What is different between when I did it and when I did not do it, will it differ greatly as a result of human beings doing something against nature and not doing it as a result? There seems to be a big difference in the short term, but I think that nothing is different in the long term, a large amount of radioactivity was diffused into the natural world, and the bombed animals died altogether, including humans. There are individuals that survive, but diversified living things never die out due to one cause alone, there are individuals that adapt to radiation contamination.Demerit in the previous environment It was a benefit to change the environment because the environment changed.A radiation was a big gift for that individual.I think that evolution happens in that way, "Kikuzo said.

Takako thought that there were people who did not match the end points of the talks as they started speaking here. "Is Mr. Kikuji, a story of evolution, or is it a story when I did it or when I did not do it?"
Kikuso said after drinking a bite of herbal tea.
"I think that it is okay not to talk about the story of the story so clearly that the talk is a flow of thought, it is very natural, I think that it is better not to forcibly change it"
"But since conversation is not solitary, you also need to consider the thoughts and thoughts of the other party. I think that it is a conversation for the first time when a catch ball is established.
"Of course I guess that's not because I am not thinking about anything, considering the other party. If you do not talk about evolution, do not force it, just do it straight. Takako speaks in such a straightforward way in that sense. "
"It's such a sexual thing, although there may be occupational things, but I'd like to figure out the answer in the conversation, for example, the conclusion of the story" when I did it and when I did not do it " I'd like to find it inside. Discovering by session, something new discoveries that I could not bring out by themselves, asking for such a thing in conversation. "
"It's a different feeling from me, I think about the conversation in a more relaxed direction, I think the answer and the conclusion are uncertain.When I derive it, that is definite Even if I do it does not do, I think that nothing will change in the long run.I think that nature always is going to return to the form that the city is steadily more natural It will be swallowed into. "It will be forest again in decades also here."

"How much does man humans impact naturally, for nature it is not that big?"
"In the long run, I think that the answer is not deterministic, perhaps something may be irrevocable, and that is for the environment, this Perhaps it will cause deadly damage to the Earth, there is no imagination I can do anything, anything can happen. "
"Is there a human being who survives in this world where radiation is prevalent? Acquire something like resistance"
"I think that there is a person who responds to the environment also among human beings as it is the resistance that originally had it become such an environment.While leaving it as descendants as heredity, I will survive. "
"But is that also an indeterminate conclusion?"
"Of course it may be that human beings die out, nobody knows, the future itself is uncertain, nothing has been decided, I told you earlier, anything can happen, the time is not going on It might be, "

Takako remembered that he had time slipped.

"Is not time going on, is it related to the fact that I came to this future?"
"If Takako's thing is true, it will prove it, time will not continue.If time is always going on, Takako is not here, time axis is I do not miss it, so I do not think there is any point in seeking a conclusion in a conversation.I think I can relax and enjoy it. "As one of entertainment"

Takako thought about that for a while. If time continues, it can not be time slip. Then you may be able to explain. But that is not definitive.

"I understand well, I will not draw expectations from Kikuzo-san, I do not expect that kind of thing, each other, that is personality.I think that there is no need to forcefully adapt it, It seems that the conversation is established.
"That's right, because Takiko seems to be a type that is clearly clear, I can easily give out a real intention, but I feel rude but I think that there is a feeling a bit more soft, femininity"
"It seems weird, but my soul is a man, I am born to a woman now, I also remembered that, so I do not think there are so many feminine things"
"Well, I think I've thought about it, I think that men and women are both equipped with men.I believe that female sex occupies a lot in myself I think that it is a spiritual story to the last.Because it is easy to talk to a woman more than a man from a childhood, it is comfortable, to become a friend.I think that a woman is a creature of feeling. That's how it feels.
"Well, it's good, then I am very thankful for that stuff.I think that I can relax a bit more.I think that I will emphasize the theory rather than emotion.It is hard to explain, but the truth of unshakable things and things is emotion I think that it is in theory or law "
"Theories and laws are mathematical rather than emotional, emotions are feminine and literary, fluffy.Mathematical things are hard, it may be said that it is digital That masculinity also includes aggression.It is manifestation of a fighting instinct like "fight" not feminine, but men are more tough and stronger than women, but that is because of the conversation It is a cause of conflict and danger when mixed in. I think that it is better to put female sex on the table in the conversation. "
"Men think that the body is tough and strong, the spirit is weak, everyone who I know is such a feeling I think that women are more tough than men mentally.The men and women like that I think that it is fair in meaning, is the floral pants of Kikuzo's appearance of femininity? "
"Although it may be there, I am watching the floral pattern in the category of camouflage pattern.Both green and brown multicam patterns and floral patterns are camouflage patterns in me, a design that melts naturally. I think that it is a design of nature, as opposed to a check pattern. "
"I like the plaids relatively much, I feel idyllic and there is no aggressive image.The soldiers in the check pattern do not have anything.The camouflage pattern definitely imagines the war Okay, as a sense "
"Camouflage pattern is the most nearly natural pattern as a pattern and it does not get tired of being curved and it is a very complex pattern and depending on the pattern it is the forest itself.The mood that wears the forest in the body Excellent and beautiful things are occasionally used for war because we need real tools and equipment to survive in the battle. "
"I think that war will not happen anymore, nobody wants to do war any more, except for some companies, but people working there will not want to wage war what kind of war is Or since everyone already knows. "
"Well, there has been no war from the world, since the disasters began to occur frequently, human beings are not so much, there are things we have to do rather than such things to survive." < br> "As a result, it was good, it means that we do not have time to fight among people, and we have to live together unless we cooperate."
"Disasters have stopped" decomposition. "From individualism to totalitarian lessons Lessons from disasters are that people with disconnected consciousness can not survive and individuality is very striking at such times People who are biased towards something are more prominent in terms of professionalism than anyone who is even more proud of everything. Everyone was useful for everyone.
"A knife is a knife, a spoon is a spoon, there are things that are good and weak for each, there is no cutlery with everything."
"I think that a knife can be said to have everything for once, there is a caution in handling it, but it is not.
"It seems that it gradually becomes a maniac feeling, but what kind of work did Mr. Kikuji do?"
"I was a gadget, it's a job to care for the garden and plant trees.The scissors, saws, nata and knives were my business tools.Scissors and saws are very complex tools You can not make it with handicraft, you must also be familiar with iron and blacksmith and elaborate in millimeters.The knife is the simplest tool, like a pointed stone.

Takako thought that the talk was largely out of line, but I could not remember what we were talking about at the beginning. Well, I thought so. Let's lean on femininity. A woman is an emotional creature. I live according to my heart.


Kikushi pour the vegetable miso soup into the bowl, saying "I could do it." Takako received it. It was a delicious miso soup with plenty of vegetables.
"It looks very tasty, I thought of what to do with food.What was this vegetable?"
"There are fields in the garden, plenty of things growing everywhere in the neighborhood, wild vegetables growing wild, vegetables are growing wild, alone can not eat very much. The vegetables in the garden that was doing a family garden in the town breed, as it is, although it depends on the place, I think that you can do as much as you can leave food to nature.If you go to rural areas more abundant food I think that it is good to make soy sauce and miso, "Kikuzo said.

種 第5話 Seed Episode 5




第5話


「大きな災害が立て続けに起こったんだよ、世界中でね。地震が起こり、それと連鎖して火山も噴火した。それに、気候も大きく変動した。世界的に森林が減少してさらに温暖化が加速して、海流が変化したんだ。夏の台風はどれも超破壊的なものだった。救出や復興は遅れ、手がつけられないまま放置されることもあった。多くの人が亡くなり、多くの企業が倒産した。世界各地でそれは起こった。災害は、人間には防ぎようがない。災害は経済に大きな打撃を与える。耐えられない企業は倒産するしかない。負の連鎖は加速して拡大する。そして経済が崩壊した。あっという間だったよ。構築して維持をするのが大変なシステムは、崩れ去る時は一瞬なんだと思ったよ。苦労して人間が作り上げたシステムは、人間の不自然さから生まれた不自然なシステムだったんだと思うんだよ。俺は街がだんだん自然に飲み込まれていくのを見ていて、それを感じたんだ。自然のシステムは勝手にできていく。自然がシステムを構築していくんだ。人間もその自然のシステムに習って経済や社会を構築するべきだったんだ」
「それで、経済が行き詰まってからどうなったの?」
「国が経済破綻し始めた。やがてほとんどの先進国がその機能を失った。ライフラインは止まり、貿易もストップした。日本では発電のほとんどを化石燃料に頼っていた。電気が止まると原発を安全に維持することはできない。原発はその全てがメルトダウンしたんだ。日本人はほとんどが国外に避難した。あらゆる理由で国内にとどまった者は全員が被爆した。俺も被爆している。気の毒だが貴子さんも、もう被爆している。そして当然だが、それは世界各地で起こった」と菊蔵は言った。

貴子はコップの中の温かいハーブティーを一口飲んだ。思考を止めて、事実だけをそのまま受け入れる。
「あまり驚かないようだね」と菊蔵は言った。
「思考は時には生き残る邪魔をすることがあるの。あれこれ考えて落ち込んでも仕方がない。起こったことは過ぎ去ったこと、今とこれからが大事なのよ」
「そういったタイプの人間だけが生き残った。メンタルにダメージを受けた人間は寿命を縮めた。心も体も病に侵されていったんだ、世界は混乱した。人口は激減したようだ。世界が混乱し始めてからしばらくはメディアも機能していて、ヨーロッパで全てを自然エネルギーに移行させてライフラインを維持する計画が進んでいるようだったが、今ではそれもどうなったかわからない。放射能は世界に拡散されたんだ。安全な場所なんてもうどこにもないだろう。被爆したくなければ地球を出て行くしかないね。そうなってからは、もう情報は一切入ってこない。メディアは死んだ。世界は静まり返っている」
「情報がなくなってからはどれくらい経つの?」
「2年半か3年くらいだろう、情報は人の噂程度になって、そのうち何もなくなった。その間にも人口はどんどん減っていった。でも激変は、今年に入ってからようやくひと段落してきたように思う」
「今は少し落ち着いているの?」
「そうだな、地震はたまにあるが、倒壊するものはほとんど倒壊している。朽ちるものはほぼ朽ちている。気候も寒冷になり始めたようだ。都市機能がなくなったせいもあるかもしれないが、太陽活動が沈静化しているようなんだ。これはだいぶ前に科学者が言っていたことだけど、地球は小さな氷河期に向かっているようなんだ。台風もあまり大型化しなくなった」
「安定し始めたってことなの?」
「それはわからないな、去年よりはましということだよ。この先に何が起こるか何もわからない」

二人は黙ってハーブティーを飲んだ。それぞれに思いを巡らせていた。
「菊蔵さんはなぜ避難しなかったの? ご家族はどうしたの?」
「家族はそれぞれの理由で死んだ。嫁と息子だ。俺だけ生き残った。それもあって、俺は避難しなかった。ここにいたかったんだ」
「ごめんなさい、辛い理由なのね」
「避難は強制ではなかったんだ。もう国も末期だったし、全員が避難できるかどうかさえわからなかった。船も飛行機も、いつ運行が止まるか、誰にもわからなかった。その頃が一番ひどい時期だったかもしれない。あの頃のことはもうあまり思い出したくない」
「想像するだけでも、十分だわ。ネガティブな出来事も沢山あったでしょうし」
「人間は善も悪も両方抱えていると思ったよ。それが人間なんだってね」
「思い悩めばなんだって問題になってしまうわよ。人間は善も悪も内包している。それは単なる事実だと受け止めれば、ただそれだけのことよ」
「俺もそう思ったよ。そう思うととても気持ちが楽になった。俺は人間に何かを期待していたんだと思う。もっと暖かみのある何かを」
「環境が大きく影響するのよ。善が引っ込んで悪が出てくる。月が欠けていくように、闇ばかりになる。でも、それでも善を秘めている。悪と同じくらいの善を秘めている。私はそう思う」
「ひどい時期だったからな。普通の生活が成り立っていなかった。『当たり前』がどんどん崩壊して行ったんだ」
「菊蔵さんは身体は大丈夫なの? 私はこれでも医者だから、簡単な診断ならできるわよ」
「そうなのかい? ありがたい、できれば診てもらいたい、自分の身体は今の所は大丈夫だと思うんだが、被爆の影響が心配でもあるんだ」

貴子は菊蔵の脈拍を調べ、目や舌の状態を調べ、毛や皮膚の様子を調べた。内臓や血液に異常があれば、必ず何らかの兆候が表面に現れる。それは東洋医学でも同じことだ。内側の異常はサインとして外側に現れる。
菊蔵の身体は、痩せてはいたが皮膚や血管に異常はなさそうだった。内臓も問題はなさそうだ。栄養が偏っているようには思うが、極端にバランスを崩しているわけでもない。脈拍も正常だった。「特には問題はなさそうね。でも運動はあまりしていないの? 筋力が少し落ちているみたいよ」
「割と色々と動き回る時もあるんだけど、公園やこのガレージの前で昼寝をしていることが多いな。もう年だし、日記を書いたり、スケッチをしたりしていることが多い。あとはぼんやりと日光浴をしている」
「もう少し運動をしたほうがよさそうよ。歩くのは一番いい運動なの、無理のない程度で散歩してみるといいわよ」
「ありがとう、そうすることにするよ。診てもらって一安心することができた。腹も減ってきたし、何か作るよ。野菜の味噌鍋を作ろう。味噌があるしね。まあ、ゆっくりお茶でも飲んでいてくれ、水もこの水筒に入っている、ヤカンで沸かすといい」菊蔵はそう言って、椅子から立ち上がり、料理の支度を始めた。

焚き火はガレージの軒先で焚かれていた。開け放たれたシャッターからは四角く切り取られた景色が見える。道路と向かい側の家の門。今では機能していない折れた電信柱や電線。割れたアスファルト、堆積した落ち葉や枯れ枝。
太陽は明るくそれらを照らしている。
まだ夕方まではしばらく時間がありそうだ。ガレージを入ってすぐのところに置かれたテーブルで、折りたたみのキャンプ用の椅子に座っている。

貴子はそんな風景をぼんやりと眺めた。
時々雲が太陽をすっぽりと隠してしまった。ゆらゆらと揺れる焚き火の火は、日陰になった世界を明るく照らした。「これくらいの火が丁度いいんだ」貴子は焚き火を見ながらそう思った。

外を見るのに飽きると、ガレージの中を見回してみた。車一台分が入る程度のガレージで、一番奥の方にベッドらしきものが置いてあって布団が敷かれていた。
入り口がキッチンで、今いるところはリビングのような使い方をしていた。道具や物は壁にかけたり棚をつけて置いたりしている。ほぼすべての道具や必要品がどこにあるのか視覚的に確認出来るようにしてある。その置き方は、機能的で使いやすそうな置き方だった。使う用途に合わせたスペースに、必要なものが家具と共に配置されている。動線の使い方がうまいのだろう。アウトドアも好きなのかもしれない。アウトドア用品も要所に配置してあった。アウトドア用品には機能的なものが多い。軽量で、コンパクトで多機能だ。性能もいい。

「物質」と貴子は思った。この身体の人間が生きて行くためには物質がいる。食材は、ほぼ料理をして食べる。快適に生きるには、料理をするための道具は最低限必要だろう。

獣の身体なら、この状況でもおそらく何も困らない。
彼らは環境に合わせて、人間が進化した姿なんだろうか。それは何を選択するかによるんだろうが、都市生活をやめることを選んだ人間は、やはり野生化という進化の道を行くのかもしれない。

「物質からの脱却」私もその道を選択すると思う。獣の身体は、自然の中で生きるために進化している。持つものは肉体と精神のみだ。シンプルに自分だけだ。

「物質」とは人間だけが必要とするものだ。なぜそんな進化の仕方を選択したのだろう。ある段階で、快適さを物質に求め、自分に求めるのをやめたのだろうか。脳を大きくして身体の能力よりも脳の能力の進化に重きを置いたのだろうか。人間の脳は、何を求めているのだろう。この脳は、正しいことを選択し、進化しているのだろうか。

貴子はそこで思考を止めた。思考をするのなら、菊蔵と会話をしてみよう、情報を聞きたいし、彼の意見も聞きたい。私は何を選択し、どこに歩いていけばいいのだろう。
そのヒントを見つけたい。






Episode 5


"A major disaster struck in the world, in the world, an earthquake occurred, the volcano erupted in conjunction with it, and the climate also fluctuated greatly.When forests declined worldwide and global warming accelerated The ocean current has changed, none of the summer typhoons were super destructive.The rescue and reconstruction were delayed and sometimes left untouched, many people died, Many companies went bankrupt, it happened all over the world, disasters have no way to prevent human beings, disasters have a major impact on the economy, companies that can not bear will go bankrupt, negative chains will accelerate And the economy collapsed.It was in a moment.I think that it is a moment when it collapses.The system which the struggle made up by human beings, Born from human unnaturalness I think that it was an unnatural system, I felt that the city was gradually being swallowed naturally, I felt it.Natural system can be done without permission.Naturally, We should build it, humans should learn from that natural system and build economy and society. "
"So, what happened after the economy stalled?"
"The country began to economically collapse Soon most developed countries lost their functions, the lifeline stopped and trade stopped.In Japan, we rely on fossil fuels for most of the electricity generation.When the electricity ceases the nuclear power plant The nuclear power plant meltdown all of the nuclear power plants, most of them evacuated to foreign countries All those who stayed in the country for all reasons were bombed, I was also exposed. Sorry, but Takako is already bombed, and of course it happened all over the world, "Kikuji said.

Takako drank a bite of warm herbal tea in the glass. Stop thinking and accept just the facts.
"It seems not to be much surprised," Kikuzo said.
"Thinking sometimes interferes with survival, it is no use crying down thinking about it, what has happened is what has passed, now and the future is important"
"Only people of that type survived, people who suffered mental damage shrank their longevity, their hearts and bodies have also been affected by disease, the world was confused, the population seems to have declined, the world is confused It seems that the plan is progressing to maintain the lifeline by shifting everything to natural energy in Europe, but the media is also functioning for a while since the beginning, but now it is not clear how it became. I have no place to have a safe place any more There is no choice but to go out of the earth if you do not want to bombed it.After that, no more information comes in. The media is dead. The world is restless "
"How long has passed since the information is gone?"
"About two and a half or three years, the information has become rumor about people, nothing has been lost in the meantime, while the population has declined rapidly, but the drastic change finally comes from this year's paragraph I think I've done it. "
"Is it a little calm now?"
"Well, there are earthquakes occasionally, but almost everything that collapses is almost destroyed, the things that have decayed are almost decayed, the climate seems to start to be cold, even though the city function may have gone , The solar activity seems to be calming down.This is what the scientists said long ago, but the earth seems to be heading for a small ice age, the typhoon does not become too big.
"Is it supposed to start to stabilize?"
"I do not know, it's better than last year, I do not know anything about what will happen ahead"

They silently drank herbal tea. I was thinking each one.
"Why did not Mr. Kikuchi evacuate? What about the family?"
"My family died for each reason, my daughter and my son, only I survived, which I also did not evacuate, I wanted to stay here."
"Sorry, it's a painful reason"
"The evacuation was not compulsory, the country was also at the end of the year and it was not even known whether everyone could evacuate, neither ships nor airplanes knew when the operation would stop, no one knew when it was the best It may have been a terrible time, I do not want to remember much about that time.
"Even just imagining it is enough, there must have been a lot of negative events" "I thought that human beings have both good and evil, that is human," he said.
"Everything comes to be a problem if you are worried, human beings encompass both good and bad.If it is just a fact, that's all that is."
"I also thought so, I felt very comfortable when I thought so, I think I was expecting something for humans." Something warmer "
"The environment will have a major impact, good will retreat and evil will come out, so that the moon will be lacking, it will only make the darkness but still has goodness.It has the same goodness as evil I think so.
"It was a terrible time, normal life was not established," Naturally "collapsed more and more"
"Is Mr. Kikuji okay the body is OK? Because I am still a doctor, I can do a simple diagnosis,"
"Do you think so? Thankfully, I would like to see them if possible, I think that my body is okay now, but I am worried about the impact of the atomic bombing."

Takako examined the pulse of Kikuzo, examined the condition of the eyes and tongue, examined the state of hair and skin. If there is abnormality in internal organs or blood, certain signs will certainly appear on the surface. That is the same in Oriental medicine. The inner abnormality appears outward as a sign.
Although the body of Kikuro was thin, it seemed that there was no abnormality in skin and blood vessels. There seems to be no problem with internal organs. I think it seems that nutrition is biased, but it is not extremely weak. The pulse was also normal. "There seems to be no problem in particular, but you do not do much exercise, you seem to have a bit of muscle weakness."
"There are times when I move around in various ways, but I often take a nap in the park or in front of this garage.I already have years, I often write diaries and sketching. I'm sunbathing blankly. "
"It seems better to exercise a bit more but walking is the best exercise, try walking to a reasonable extent."
"Thank you, I will do it. I was able to relieve and I was relieved. My hungry has also decreased and I will make something. Let's make a miso saucepan of vegetables.You have miso.Well, slowly drink tea Take it, water is in this water bottle, boil it with a yakan. "Kikushi said so, standing up from the chair and began preparing for cooking.

Bon fires were burned at the eaves of the garage. From the open shutter you can see the square clipped scenery. The gate of the house opposite the road. A broken telegraph pole or electric wire that is not functioning now. Broken asphalt, accumulated fallen leaves and dead branches.
The sun is brightly shining on them.
It seems that there is still time for some time until evening. I sit in a folding camping chair with a table placed just in front of the garage.

Takako looked at the scenery vaguely.
Sometimes the cloud hid the sun comfortably. The fire of the boiling swaying bonfire shone brightly the world in the shade. "This fire is exactly right." Takako thought while watching the bonfire.

I got tired of seeing the outside, I looked around the inside of the garage. It was a garage with enough car for one car, with things like beds on the innermost side and futon beds laid.
The entrance was in the kitchen, where I am now using it like a living room. Tools and objects are put on walls and shelves. It makes it possible to visually check where almost all tools and necessary items are located. The way it was placed was a functional and easy to use placement method. Necessary items are arranged with furniture in the space according to the use to be used. How to use flow lines is good. Perhaps it likes outdoor. Outdoor equipment was also placed at key points. Many of outdoor equipment are functional. It's lightweight, compact and multi-functional. Performance is also good.

Takako thought "substance". There is a substance for this human body to live. I eat foods almost cooking. In order to live comfortably, tools for cooking are at least necessary.

If it is the body of a beast, perhaps nothing is troubled in this situation.
Are they human beings evolved according to the environment? It depends on what you choose, but the person who chose to quit city life may be going to evolve the way of wildening.

"Removing from substances" I think that I will choose that road as well. The beast's body is evolving to live in nature. The only thing you have is the body and mind. Simply be yourself.

"Substance" is what human only needs. Why did you choose such a way of evolution? Was it somewhat like asking for comfort for comfort and stopping seeking for myself? Were they growing their brains and putting more emphasis on the evolution of their brains than their physical abilities? What is the human brain seeking? Is this brain choosing the right things and evolving?

Takako stopped thinking there. If you are thinking, let's talk to Kikuzo, want to hear the information, and want to hear his opinion. I wonder what I choose and where I can walk.
I want to find the hint.

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