趣味で歌と小説と詩を掲載させていただいてます。

桜童子 第20話



あたしは久しぶりに強烈な飢えを感じた。


 現代になってからは、不思議なことにほとんど飢えず、前に食事をしたのは確か5年ほど前だ。
 あたしは、ほぼ毎日、コーヒーと煙草で過ごしている。
 「ランチにコーヒーと煙草だけなんて健康に悪い」というフレーズを多用する映画をどこかで見た記憶があるが・・・、あたしは本当にそれだけで過ごせる。
 コーヒーを初めて飲んだ時は感動したものだ。舶来の異国の香りが病みつきになった。深い土の香りがするし、豆の力強さも感じる。気持ちがほぐれて、疲れが取れる。







 しかし、今のこの飢えはハンパない。

 強烈な、突然の飢えだ。

 気分が悪くなり、吐きそうになる。そこらのネズミや猫に、手が伸びそうになる。


 しかし、嬉しくもある。

 あたしは久しぶりに、食欲を感じる。血の滴る肉を食いたい。









   この、ハンパない飢えをどうするか。

 タンブラーにコーヒーを入れに行く用事もあるし、とりあえず街へ降りることにする。

 あたしは屋上からふわりと身を投げて、ビルの間を滑空して地上に降りる。


   地上では、人間と車が巨大な波のように道を流れていく。巨大なエネルギーの流れと気の流れ。

 人工的なルールに管理され、そのルールも人工的に書き換えられる。

 点滅する信号に操られる人間。ルールの中で生きて、ルールに閉じ込められたまま死ぬ人間。

 時代ごとに書き換えられるルールで、人間の運命は、あるものは翻弄され、追いやられ、迫害される。あるものは富を得、天下を得、天までも得ようとする。
 人間の欲望と傲慢さは、空の神秘にまでメスを入れて、そのくせ、その本意を見ようとしない。
 人間の愚かさと弱さは、自分を見失い、変わろうとしない心と魂だ。




 赤信号で道路を横断する人間は、この国にはいないのだ。














 ダメダ思考テイシ。


 コーヒーを買いに行くだけなのに、一々あたしの狂った思考は、狂った歯車をくるくる回す。

 誰がルールを書き換えようと、知ったこっちゃないし、あたしには関係のないことだ。

 それよりもこの飢えだ。
 まだ午前中だし、街には以外と死角がない。防犯カメラがいたるところにあって、うっかりしていると警察に追われることになる。


 あたしはまだ余力があるうちに、東京を離れようと決めた。

 東京、この街は随分変わった。江戸の時代から、300年くらいしか経っていないのに、宿り神やもののけはもうほとんど居なくなった。



 西へ行く。


あたしは新幹線の切符売り場でポケットの中のお金を全部販売機に入れて、一番遠い駅の切符を買った。

新神戸駅。

「神の戸」がある街だ。

 人工もそこそこ多い。何よりも海がある。海の見える街に行きたい。

 海の発砲する音を聞き、何かが始まるのを見届けたい。確かにそれは、神戸の街だ。

 神戸の街は、あたしの記憶にある。

 神戸は街全体が神の暮す場所なのだ。一から八までの宮がある。

 灘の龍と布引の龍がまだ居るはずだ。

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