趣味で歌と小説と詩を掲載させていただいてます。

桜童子 第18話



「狂気」というのは「気」の狂った状態で、精神も肉体も崩壊に向かう。流れに逆らって逆流したり、自然に逆らって流れを変えたり、つくったり。

 良かれと思って狂気に向かう。


 本来の流れは自然の流れで、人の「気」にも流れている。
 自分を曲げて生きていると、人の「気」も狂ってくる。

 あたしはずっと、「人であったのに人を食う」という「狂気」に苦しみ、「人に戻りたい」と願ってきた。人に戻ればきっと、この「狂気」も消えて、「正気」の世界に帰れるだろうと。
 「狂気」と「正気」の間を、あたしは行ったり来たりしているように、長い間、思っていた。
「狂気」の世界はあたしを安住させ、「正気」の世界はあたしを苦しめた。 
佐吉との平穏な暮らしの裏側にも、あたしの「狂気」は息づいていた。
  人との暮らしはある意味、自分を殺した生き方だった。そのことに、長い間、気がつかなかった。それが「愛」だとか「恋」だと思っていた。

 「鬼」と「人」。狂気に住まう住人と、正気に住まう住人は、どこまでも分かたれた世界なのだ。


 もしもあたしが人を食わないでいると、当然、鬼の気も狂ってくる。あたしはあたしらしく、本能に従い、人を食う。それを人は「狂気」と呼ぶが、鬼からすれば、それは「正気」だ。

 あたしは冷静に、人らしく考えてみた。
 人はあたしを狂気という。確かにその通り、人から見ればあたしは狂気だ。
 人の道理に外れているし、食料が人なのだ。狂気そのものだ。

 鬼から見ればあたしは正気だ。命を殺めるのは人も同じだ。それが人か、それ以外か、それだけの違いだ。
 人があたしを「罪」というなら、同じくらいの「罪」を人は犯しているのだ。
鬼が罪なら、人も罪だ。




 ・・・・・あるいは、これを「狂気」というのだろうか。
 人の道理にそぐわない「意思」みたいなものを「狂気」というのだろうか。 
もしそうだとすれば、あたしは人も鬼も超えた「狂気」そのもの、ということになる。あたしの意思が狂っているのだ。





 悲しいとしか言いようがないが、たとえそうだとしても、あたしはあたしだ。
 狂気のまま生きていく。それがあたしだ。







 ふっと、ため息をついてみる。


 思考ハ一旦停止セヨ。



 あたしはタンブラーに残ったコーヒーをひと口飲んで煙草に火をつける。

 「狂気」と「正気」の物語。
 遠い昔の記憶だ。









 佐吉が死んでしまって、あたしはだんだん変わっていった。
 あたしは人に戻りたいと願い、人のように暮らしたいと願っていた。そしてその願いは、佐吉と共に添い遂げることで叶えられた。
 何十という年月を、愛する人と桜を数えながら過ごしたのだ。






 愛する人はいつの日か、去っていくことを知っていた。
 人の男に情を向けて、それがどうなるのかも知っていた。
 あたしは何かを手に入れて、涙と共に何かを失うことを知っていた。

 あたしは諸国を流離いながら、涙が尽きるのを待った。


 あたしは人に戻りたいという思いが、いつしか曖昧になっていくのを感じ始める。
 人であれ、鬼であれ、出会いと別れに翻弄されて、苦しみと共に愛を知り、別れの果てに孤独を知る。

 あたしの孤独は佐吉に出会う前よりも、佐吉をなくした後の方が、さらにその重みを増していた。








 孤独が重みを増すのだ。











   重さを増した感情や想いは、その動きを鈍らせる。
 今のあたしにはそれがわかる。

 朝焼けの音を聞きながら、静かな地鳴りに耳をすませる。


 あたしはパソコンを開き「日記」の続きを書き始める。














 鬼の「あおい」はこの世の鬼。





   ちづと言う名も良かったんだが、佐吉が亡くなって、それを境に名前を変えた。気分も変えてみたかった。

 誰も知り合いのない国へ行き、ほとんど誰とも話をしなかった。

 あたしは大抵一人でいた。奉公勤めも時にはしたが、人の中に紛れて住んでも、人に心は惹かれなかった。興味も同情も湧かなかった。

 人に嫌気がさすと、あたしは山に暮らすようになった。
 捨て置かれた草庵や、人が住まなくなった集落に住み、何もなければ土穴で眠った。

 昔のような暮らし方だが、昔のようでないところは、あたしは住処を掃除した。障子や襖も張り替えた。大工のようなこともしたし、掘り方のようなこともした。
 土穴に寝る時も溝を切って枝を敷き、落ち葉を敷いて花なども散らした。屋根を編むこともしばしばあった。竹を編んだり、葦を編んだり、紙を梳いたりもした。

   綺麗な水と草木があれば、人の技術でいかようにも人らしく暮らせる。
 あたしは山中の孤独な暮らしを、ここが浄土と思うこともあった。
 季節になれば花が咲き、木々や精霊はおしゃべりで、星の歌がよく聴こえた。雪が積もれば積もったで、白銀の世界は美しく、夜になって月が出れば、その風景は空にも似て、銀河の星々とこの星をつないでいく。


 孤独という美しい世界が、あたしの住まう世界なのだと、少しづつ分かり始める。










 保存。











 コーヒーと煙草の匂い。朝の風。






 孤独な鳥の条件は五つある
 第一に孤独な鳥は最も高いところを飛ぶ
 第二に孤独な鳥は同伴者にわずらわされず
 その同類にさえもわずらわされない
 第三に孤独な鳥は嘴(くちばし)を空に向ける
 第四に孤独な鳥ははっきりした色をもたない
 第五に孤独な鳥は非常にやさしくうたう




 デラクルス、あたしの好きな詩だ。










 ただ少し違うのは、音楽の趣味で言えば、あたしはどっちかというとパンクなノリの方が好きだし、破壊的で排他的で無意味な方が好きだし、繊細で綺麗で冷たいものの方が好きだ。
狂気じみたノイズが好きだ。歪ませたギターの爆音が好きだ。






 あたしは何かに目覚めたし、気づいたんだ。





 昨日までとはノリガチガウ。

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