趣味で歌と小説と詩を掲載させていただいてます。

種 第5話 Seed Episode 5




第5話


「大きな災害が立て続けに起こったんだよ、世界中でね。地震が起こり、それと連鎖して火山も噴火した。それに、気候も大きく変動した。世界的に森林が減少してさらに温暖化が加速して、海流が変化したんだ。夏の台風はどれも超破壊的なものだった。救出や復興は遅れ、手がつけられないまま放置されることもあった。多くの人が亡くなり、多くの企業が倒産した。世界各地でそれは起こった。災害は、人間には防ぎようがない。災害は経済に大きな打撃を与える。耐えられない企業は倒産するしかない。負の連鎖は加速して拡大する。そして経済が崩壊した。あっという間だったよ。構築して維持をするのが大変なシステムは、崩れ去る時は一瞬なんだと思ったよ。苦労して人間が作り上げたシステムは、人間の不自然さから生まれた不自然なシステムだったんだと思うんだよ。俺は街がだんだん自然に飲み込まれていくのを見ていて、それを感じたんだ。自然のシステムは勝手にできていく。自然がシステムを構築していくんだ。人間もその自然のシステムに習って経済や社会を構築するべきだったんだ」
「それで、経済が行き詰まってからどうなったの?」
「国が経済破綻し始めた。やがてほとんどの先進国がその機能を失った。ライフラインは止まり、貿易もストップした。日本では発電のほとんどを化石燃料に頼っていた。電気が止まると原発を安全に維持することはできない。原発はその全てがメルトダウンしたんだ。日本人はほとんどが国外に避難した。あらゆる理由で国内にとどまった者は全員が被爆した。俺も被爆している。気の毒だが貴子さんも、もう被爆している。そして当然だが、それは世界各地で起こった」と菊蔵は言った。

貴子はコップの中の温かいハーブティーを一口飲んだ。思考を止めて、事実だけをそのまま受け入れる。
「あまり驚かないようだね」と菊蔵は言った。
「思考は時には生き残る邪魔をすることがあるの。あれこれ考えて落ち込んでも仕方がない。起こったことは過ぎ去ったこと、今とこれからが大事なのよ」
「そういったタイプの人間だけが生き残った。メンタルにダメージを受けた人間は寿命を縮めた。心も体も病に侵されていったんだ、世界は混乱した。人口は激減したようだ。世界が混乱し始めてからしばらくはメディアも機能していて、ヨーロッパで全てを自然エネルギーに移行させてライフラインを維持する計画が進んでいるようだったが、今ではそれもどうなったかわからない。放射能は世界に拡散されたんだ。安全な場所なんてもうどこにもないだろう。被爆したくなければ地球を出て行くしかないね。そうなってからは、もう情報は一切入ってこない。メディアは死んだ。世界は静まり返っている」
「情報がなくなってからはどれくらい経つの?」
「2年半か3年くらいだろう、情報は人の噂程度になって、そのうち何もなくなった。その間にも人口はどんどん減っていった。でも激変は、今年に入ってからようやくひと段落してきたように思う」
「今は少し落ち着いているの?」
「そうだな、地震はたまにあるが、倒壊するものはほとんど倒壊している。朽ちるものはほぼ朽ちている。気候も寒冷になり始めたようだ。都市機能がなくなったせいもあるかもしれないが、太陽活動が沈静化しているようなんだ。これはだいぶ前に科学者が言っていたことだけど、地球は小さな氷河期に向かっているようなんだ。台風もあまり大型化しなくなった」
「安定し始めたってことなの?」
「それはわからないな、去年よりはましということだよ。この先に何が起こるか何もわからない」

二人は黙ってハーブティーを飲んだ。それぞれに思いを巡らせていた。
「菊蔵さんはなぜ避難しなかったの? ご家族はどうしたの?」
「家族はそれぞれの理由で死んだ。嫁と息子だ。俺だけ生き残った。それもあって、俺は避難しなかった。ここにいたかったんだ」
「ごめんなさい、辛い理由なのね」
「避難は強制ではなかったんだ。もう国も末期だったし、全員が避難できるかどうかさえわからなかった。船も飛行機も、いつ運行が止まるか、誰にもわからなかった。その頃が一番ひどい時期だったかもしれない。あの頃のことはもうあまり思い出したくない」
「想像するだけでも、十分だわ。ネガティブな出来事も沢山あったでしょうし」
「人間は善も悪も両方抱えていると思ったよ。それが人間なんだってね」
「思い悩めばなんだって問題になってしまうわよ。人間は善も悪も内包している。それは単なる事実だと受け止めれば、ただそれだけのことよ」
「俺もそう思ったよ。そう思うととても気持ちが楽になった。俺は人間に何かを期待していたんだと思う。もっと暖かみのある何かを」
「環境が大きく影響するのよ。善が引っ込んで悪が出てくる。月が欠けていくように、闇ばかりになる。でも、それでも善を秘めている。悪と同じくらいの善を秘めている。私はそう思う」
「ひどい時期だったからな。普通の生活が成り立っていなかった。『当たり前』がどんどん崩壊して行ったんだ」
「菊蔵さんは身体は大丈夫なの? 私はこれでも医者だから、簡単な診断ならできるわよ」
「そうなのかい? ありがたい、できれば診てもらいたい、自分の身体は今の所は大丈夫だと思うんだが、被爆の影響が心配でもあるんだ」

貴子は菊蔵の脈拍を調べ、目や舌の状態を調べ、毛や皮膚の様子を調べた。内臓や血液に異常があれば、必ず何らかの兆候が表面に現れる。それは東洋医学でも同じことだ。内側の異常はサインとして外側に現れる。
菊蔵の身体は、痩せてはいたが皮膚や血管に異常はなさそうだった。内臓も問題はなさそうだ。栄養が偏っているようには思うが、極端にバランスを崩しているわけでもない。脈拍も正常だった。「特には問題はなさそうね。でも運動はあまりしていないの? 筋力が少し落ちているみたいよ」
「割と色々と動き回る時もあるんだけど、公園やこのガレージの前で昼寝をしていることが多いな。もう年だし、日記を書いたり、スケッチをしたりしていることが多い。あとはぼんやりと日光浴をしている」
「もう少し運動をしたほうがよさそうよ。歩くのは一番いい運動なの、無理のない程度で散歩してみるといいわよ」
「ありがとう、そうすることにするよ。診てもらって一安心することができた。腹も減ってきたし、何か作るよ。野菜の味噌鍋を作ろう。味噌があるしね。まあ、ゆっくりお茶でも飲んでいてくれ、水もこの水筒に入っている、ヤカンで沸かすといい」菊蔵はそう言って、椅子から立ち上がり、料理の支度を始めた。

焚き火はガレージの軒先で焚かれていた。開け放たれたシャッターからは四角く切り取られた景色が見える。道路と向かい側の家の門。今では機能していない折れた電信柱や電線。割れたアスファルト、堆積した落ち葉や枯れ枝。
太陽は明るくそれらを照らしている。
まだ夕方まではしばらく時間がありそうだ。ガレージを入ってすぐのところに置かれたテーブルで、折りたたみのキャンプ用の椅子に座っている。

貴子はそんな風景をぼんやりと眺めた。
時々雲が太陽をすっぽりと隠してしまった。ゆらゆらと揺れる焚き火の火は、日陰になった世界を明るく照らした。「これくらいの火が丁度いいんだ」貴子は焚き火を見ながらそう思った。

外を見るのに飽きると、ガレージの中を見回してみた。車一台分が入る程度のガレージで、一番奥の方にベッドらしきものが置いてあって布団が敷かれていた。
入り口がキッチンで、今いるところはリビングのような使い方をしていた。道具や物は壁にかけたり棚をつけて置いたりしている。ほぼすべての道具や必要品がどこにあるのか視覚的に確認出来るようにしてある。その置き方は、機能的で使いやすそうな置き方だった。使う用途に合わせたスペースに、必要なものが家具と共に配置されている。動線の使い方がうまいのだろう。アウトドアも好きなのかもしれない。アウトドア用品も要所に配置してあった。アウトドア用品には機能的なものが多い。軽量で、コンパクトで多機能だ。性能もいい。

「物質」と貴子は思った。この身体の人間が生きて行くためには物質がいる。食材は、ほぼ料理をして食べる。快適に生きるには、料理をするための道具は最低限必要だろう。

獣の身体なら、この状況でもおそらく何も困らない。
彼らは環境に合わせて、人間が進化した姿なんだろうか。それは何を選択するかによるんだろうが、都市生活をやめることを選んだ人間は、やはり野生化という進化の道を行くのかもしれない。

「物質からの脱却」私もその道を選択すると思う。獣の身体は、自然の中で生きるために進化している。持つものは肉体と精神のみだ。シンプルに自分だけだ。

「物質」とは人間だけが必要とするものだ。なぜそんな進化の仕方を選択したのだろう。ある段階で、快適さを物質に求め、自分に求めるのをやめたのだろうか。脳を大きくして身体の能力よりも脳の能力の進化に重きを置いたのだろうか。人間の脳は、何を求めているのだろう。この脳は、正しいことを選択し、進化しているのだろうか。

貴子はそこで思考を止めた。思考をするのなら、菊蔵と会話をしてみよう、情報を聞きたいし、彼の意見も聞きたい。私は何を選択し、どこに歩いていけばいいのだろう。
そのヒントを見つけたい。






Episode 5


"A major disaster struck in the world, in the world, an earthquake occurred, the volcano erupted in conjunction with it, and the climate also fluctuated greatly.When forests declined worldwide and global warming accelerated The ocean current has changed, none of the summer typhoons were super destructive.The rescue and reconstruction were delayed and sometimes left untouched, many people died, Many companies went bankrupt, it happened all over the world, disasters have no way to prevent human beings, disasters have a major impact on the economy, companies that can not bear will go bankrupt, negative chains will accelerate And the economy collapsed.It was in a moment.I think that it is a moment when it collapses.The system which the struggle made up by human beings, Born from human unnaturalness I think that it was an unnatural system, I felt that the city was gradually being swallowed naturally, I felt it.Natural system can be done without permission.Naturally, We should build it, humans should learn from that natural system and build economy and society. "
"So, what happened after the economy stalled?"
"The country began to economically collapse Soon most developed countries lost their functions, the lifeline stopped and trade stopped.In Japan, we rely on fossil fuels for most of the electricity generation.When the electricity ceases the nuclear power plant The nuclear power plant meltdown all of the nuclear power plants, most of them evacuated to foreign countries All those who stayed in the country for all reasons were bombed, I was also exposed. Sorry, but Takako is already bombed, and of course it happened all over the world, "Kikuji said.

Takako drank a bite of warm herbal tea in the glass. Stop thinking and accept just the facts.
"It seems not to be much surprised," Kikuzo said.
"Thinking sometimes interferes with survival, it is no use crying down thinking about it, what has happened is what has passed, now and the future is important"
"Only people of that type survived, people who suffered mental damage shrank their longevity, their hearts and bodies have also been affected by disease, the world was confused, the population seems to have declined, the world is confused It seems that the plan is progressing to maintain the lifeline by shifting everything to natural energy in Europe, but the media is also functioning for a while since the beginning, but now it is not clear how it became. I have no place to have a safe place any more There is no choice but to go out of the earth if you do not want to bombed it.After that, no more information comes in. The media is dead. The world is restless "
"How long has passed since the information is gone?"
"About two and a half or three years, the information has become rumor about people, nothing has been lost in the meantime, while the population has declined rapidly, but the drastic change finally comes from this year's paragraph I think I've done it. "
"Is it a little calm now?"
"Well, there are earthquakes occasionally, but almost everything that collapses is almost destroyed, the things that have decayed are almost decayed, the climate seems to start to be cold, even though the city function may have gone , The solar activity seems to be calming down.This is what the scientists said long ago, but the earth seems to be heading for a small ice age, the typhoon does not become too big.
"Is it supposed to start to stabilize?"
"I do not know, it's better than last year, I do not know anything about what will happen ahead"

They silently drank herbal tea. I was thinking each one.
"Why did not Mr. Kikuchi evacuate? What about the family?"
"My family died for each reason, my daughter and my son, only I survived, which I also did not evacuate, I wanted to stay here."
"Sorry, it's a painful reason"
"The evacuation was not compulsory, the country was also at the end of the year and it was not even known whether everyone could evacuate, neither ships nor airplanes knew when the operation would stop, no one knew when it was the best It may have been a terrible time, I do not want to remember much about that time.
"Even just imagining it is enough, there must have been a lot of negative events" "I thought that human beings have both good and evil, that is human," he said.
"Everything comes to be a problem if you are worried, human beings encompass both good and bad.If it is just a fact, that's all that is."
"I also thought so, I felt very comfortable when I thought so, I think I was expecting something for humans." Something warmer "
"The environment will have a major impact, good will retreat and evil will come out, so that the moon will be lacking, it will only make the darkness but still has goodness.It has the same goodness as evil I think so.
"It was a terrible time, normal life was not established," Naturally "collapsed more and more"
"Is Mr. Kikuji okay the body is OK? Because I am still a doctor, I can do a simple diagnosis,"
"Do you think so? Thankfully, I would like to see them if possible, I think that my body is okay now, but I am worried about the impact of the atomic bombing."

Takako examined the pulse of Kikuzo, examined the condition of the eyes and tongue, examined the state of hair and skin. If there is abnormality in internal organs or blood, certain signs will certainly appear on the surface. That is the same in Oriental medicine. The inner abnormality appears outward as a sign.
Although the body of Kikuro was thin, it seemed that there was no abnormality in skin and blood vessels. There seems to be no problem with internal organs. I think it seems that nutrition is biased, but it is not extremely weak. The pulse was also normal. "There seems to be no problem in particular, but you do not do much exercise, you seem to have a bit of muscle weakness."
"There are times when I move around in various ways, but I often take a nap in the park or in front of this garage.I already have years, I often write diaries and sketching. I'm sunbathing blankly. "
"It seems better to exercise a bit more but walking is the best exercise, try walking to a reasonable extent."
"Thank you, I will do it. I was able to relieve and I was relieved. My hungry has also decreased and I will make something. Let's make a miso saucepan of vegetables.You have miso.Well, slowly drink tea Take it, water is in this water bottle, boil it with a yakan. "Kikushi said so, standing up from the chair and began preparing for cooking.

Bon fires were burned at the eaves of the garage. From the open shutter you can see the square clipped scenery. The gate of the house opposite the road. A broken telegraph pole or electric wire that is not functioning now. Broken asphalt, accumulated fallen leaves and dead branches.
The sun is brightly shining on them.
It seems that there is still time for some time until evening. I sit in a folding camping chair with a table placed just in front of the garage.

Takako looked at the scenery vaguely.
Sometimes the cloud hid the sun comfortably. The fire of the boiling swaying bonfire shone brightly the world in the shade. "This fire is exactly right." Takako thought while watching the bonfire.

I got tired of seeing the outside, I looked around the inside of the garage. It was a garage with enough car for one car, with things like beds on the innermost side and futon beds laid.
The entrance was in the kitchen, where I am now using it like a living room. Tools and objects are put on walls and shelves. It makes it possible to visually check where almost all tools and necessary items are located. The way it was placed was a functional and easy to use placement method. Necessary items are arranged with furniture in the space according to the use to be used. How to use flow lines is good. Perhaps it likes outdoor. Outdoor equipment was also placed at key points. Many of outdoor equipment are functional. It's lightweight, compact and multi-functional. Performance is also good.

Takako thought "substance". There is a substance for this human body to live. I eat foods almost cooking. In order to live comfortably, tools for cooking are at least necessary.

If it is the body of a beast, perhaps nothing is troubled in this situation.
Are they human beings evolved according to the environment? It depends on what you choose, but the person who chose to quit city life may be going to evolve the way of wildening.

"Removing from substances" I think that I will choose that road as well. The beast's body is evolving to live in nature. The only thing you have is the body and mind. Simply be yourself.

"Substance" is what human only needs. Why did you choose such a way of evolution? Was it somewhat like asking for comfort for comfort and stopping seeking for myself? Were they growing their brains and putting more emphasis on the evolution of their brains than their physical abilities? What is the human brain seeking? Is this brain choosing the right things and evolving?

Takako stopped thinking there. If you are thinking, let's talk to Kikuzo, want to hear the information, and want to hear his opinion. I wonder what I choose and where I can walk.
I want to find the hint.

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