趣味で歌と小説と詩を掲載させていただいてます。

四季の輝き 第29話 Shine of the Four Seasons Episode 29




第29話


「タイムアフタータイムはやれる?」とユウは聞いた。
「いけますよ」とチッチは言った。
「うん、いける。チッチとよくセッションしてる曲だよ」とタナベは言った。
「あんたたち、結構渋いのやってるのねぇ」と真知子は言った。
「オッケイー! じゃあいきますか!」と美和は言った。
「ヤバそうだったらすぐに止めるからね」とユウは言った。

真知子の提案で四人は『喫茶まちこ』で演奏してみることになった。
「うちは母親の時代にはカラオケ大会やちょっとした演奏会みたいなものもやっていたの。小さいけど舞台もあるし、店の壁はバッチリ防音壁になってるの。古いけどドラムスのセットとアンプもある。私はちょっとどういう具合なのか見てみたいの。あんたたち、また懲りずに演奏をやるみたいだけど、大人が冷静に状況を一度見てみた方がいいと思うの」と真知子は言った。
「第三者に立ち会ってもらうのもいいかもしれない」とタナベは言った。四人はうなづきあって、真知子の意見を快諾した。
「このお店ってそんな感じだったの?」と美和が聞いた。
「見せかけだけの昭和レトロってわけじゃないのよ」真知子は店の看板をしまい、シャッターを半分下ろした。「これで誰も入ってこない」
「このセット相当年季入ってるけど、すごくよく手入れされてる」と美和が言った。
「そのドラムスのセットは父親のものなの。今もどこで何をやってるんだか知らないんだけど、ミュージシャンだからどこかの国で何とかして生きてるんだと思うわ。そのセットは多分とてもいいものよ、手入れはその当時の仲間の方が時々来てくれてオイルを差したり、皮を張り替えたりしてくれるの。そしてお返しに私はコーヒーをご馳走するの」
「うん、いいドラムスだよ」美和はスネアをスティックでコンコン叩きながら言った。「とても澄んだ高音。皮もいい色してる」
「ドラムスは時々叩いてやらないと木も皮も眠ってしまうらしいの。音を響かせて木や皮にそれを馴染ませるのが大切なんだって」と真知子は言った。
「ギターアンプもベースアンプも真空管ですよ。これも年季入ってますねー」とチッチが言った。

四人はそれぞれ自分のセットを終え、顔を見合わせた。


「私がしっかり見てるから大丈夫よ」と真知子が言った。「あんたたちが言ってることがもし本当なら、あんたたちだけに任せておけないでしょう」と真知子は言った。

「スローな感じでいこう。できるだけスローなテンポで」そう言ってユウはアカペラで最初の歌詞を歌った。

Lying in my bed I hear the clock tick,
ベッドに横たわって、時計の針の音を聞いてる
And think of you
あなたを想いながら

タナベがコードを弾き、ユウのテンポを確かめた。ユウの歌の色と自分のギターの色を確かめる。
チッチはユウとタナベが創り出す雰囲気に合わせてベースのリフを探る。少ない音数で二人を支える。
美和はハイハットだけでそのリズムを刻んでいたが、スティックをブラシに持ち替えてスネアの上を転がしてみる。ピンと張られた皮とブラシの毛がサラサラと澄んだ音を響かせる。
ユウは歌に優しく絡まってくる音を感じていた。「時の向こうで」。Time After Time の和訳にそう訳しているものがあった。シンディーは先へ行ってしまった自分を、時を超えてしまったような感じ方をしていたのかも知れない。同じ場所にいるのに、時を超えて違う世界にいるように感じるのかも知れない。
「時の向こうで」

音はその直後から聞こえてきた。
電子ピアノのような高音の和音。初めはぼんやりと響き、やがてその音は四人の演奏に合わせるように五人目の演奏者となった。
真知子は美和が意識を失っていることを確認した。首ががくりと垂れて身体だけが音に反応して動いている感じだ。一見すると目を伏せているように見える。
ユウがそれに気づいて真知子を見た。真知子は目で「もう少し様子を見よう」と合図した。ユウはなんとなくそれに気付き、歌を続けた。


美和は音が聞こえ始めると、自分の中の思考が止まっているのに気づいた。演奏の音は聞こえている。身体を動かしている感覚もある。思考を止められて、なにかを受け入れることを促されているようだ。意識は完全に演奏の外にいた。


獣が草原に立っていた。
「葵? 葵なの?」と美和は獣に向かって言った。
「違う。私は美和。違う次元のあなたよ」と獣は言った。
「違う次元? あなたは私なの?」
「そうよ。あなたの中に存在するあなた。あなたの本来の姿よ」
「私も獣なの? 葵だけじゃないの?」
「私たちはみんな同じ姿なの。あなたも、あなたのお友達も」
「私はなぜこんなところにいるの? あの音は何なの?」
「あの音はあなたとコンタクトを取るための入り口の音なの。意識をちょっとの間借りるための音なの。あなたをここに呼んだのは、実際の私の世界ではあなたに会えないからよ。実際の世界ではあなたは一人しかいない。もう一人の自分に会えるのは意識の世界だけなの。
実際の世界でのあなたのガイドは『魂の双子』なの。あなたはまだそのことには何も気づいていないし、気づくにはまだ早すぎるかもしれない。
あなたの世界では時間がどんどん流れていく。止めることも遅らせることもあなた達にはできない。でもあなた達のその音はその流れを変えられる。それを伝えたいの」
「私たちの音? バンドの演奏のこと?」
「そうよ。葵が心惹かれたこと。演奏。 私たちの世界には物質がないから、演奏がどんなものなのかわからない。経験した葵にしかわからない。
千年前、葵は私たちの世界からあなた達の世界に行くことに決めたの、記憶を全部無くしてね。なぜそんなことをするのかって聞いたら、あなた達の世界が心配なんだって言っていた。
それに私たちはあなた達の世界には干渉できるの。あなた達は私たちの世界には干渉できない。それは次元の違いの話なの。
葵は『業』という決まりごとにその『設定』をして記憶を無くした。『設定』による学びを終えた後に目覚めが来るようにしたの。そして記憶を取り戻して、自分を知り、本来の生きる意味を思い出すの。そして『設定』通りその『業』に苦しみながら千年を生きたの。『本当に同情するのならその世界に生まれ、その世界で苦悩しなければその世界はわからない。それでしかその世界で生きている意味を思い出せない』そう言っていた。葵はそうやって思い出したの。
私は葵からあなた達の世界の人間の苦悩を聞いた。リアルな苦悩だった。あなた達の世界は矛盾や理不尽やしがらみなんかで不自由な世界になっている。その苦悩は『悲惨』という現実も生み出している。私たちは話し合ってあなたたちにコンタクトすることにしたの。そして今、私たちはあなた達を覚醒へと導いているところなの」
「覚醒?」
「本来の自分に戻ることよ。心の声に従って生きること。知識を頼りにしないこと。自分は素晴らしい存在なんだと気づくこと」
「本来の自分。この私じゃなくって?」
「そのあなたは古い自分よ。バージョンを上げていくのよ、パワーアップするみたいに。そしてそのためにはあなた達の演奏が必要なの」
「バージョンアップと演奏がどんな関係があるの?」
「あなた達の演奏は互いを生かしあっている。役割を理解して、調和して一つになっている。シキの歌と人間の歌が歌われるの。あなた達の世界が大きく変化しつつあるの、あなた達の歌と供に」
「シキの歌と人間の歌?」
「その時が来ればわかる。私たちは一人づつコンタクトしていくことにしたの。あなたのお友達にもそのうちセッションが起こるわ」
「一人づつにコンタクト?」
「そうよ、こちらの世界の人間が一人づつ、あなたたちの世界の自分に直接コンタクトしていくの。本当は宇宙船でそっちの世界に行ってもいいんだけど、色々と面倒なことが起きるし、今は直接あなたたちの意識にコンタクトしていくのがいいと判断したの。だからあなたのお友達もそのうちこちらの世界の自分から何かのメッセージを受け取るはずよ」
「それは私たちの世界の人間全員に何かメッセージが送られるということ?」
「そうよ、大切なメッセージよ。心の声や夢でそれを受け取るのよ。私たちがあなたたちにコンタクトする時は大抵がひらめきや直感や夢という形でそれを伝える。もしも瞑想をするならその時に受け取ったものは私たちからのメッセージなの」と獣は言った。「自分からのメッセージが私たちからのメッセージよ」


タナベとチッチも美和の意識がないことに気づいた。しかし体は音を認識してリズムを刻んでいる。曲の進行も捉えている。美和を除く四人は目で合図しあった。「とりあえずこのまま続けてみよう」四人はなんとなくそれを確認しあった。


ユウは歌に集中した。
Time After Time「時の向こうで」 すれ違う心。「想いはいつもすれ違うものなんだな」とユウは思う。「想いは時を超えてしまったように、まるで違う世界に向かって投げかけているようだ。受け取るものはいない」。目の前にいるはずの誰かは、まるで鏡の中にいるように、いくら呼びかけても声は届かない。「時の向こうで」時間は別々に流れている。
同じ世界にいるのに、まるで違う世界にいるようだ。

「私は歌いながら何を考えているんだろう」思考と言葉が別のことをしている。
別々の世界にいる。

私は時間と世界のことを考える。想いがすれ違う時、それは世界がすれ違っているのかもしれない。平行線の世界。どこにも交わる時がない。

真知子は手を上げて「一度止めよう」という合図を送った。
三人はそれを見て曲の途中で不意に演奏を止めた。ギターとベースの弦の震えが余韻としてノイズのように響いている。
その音が止まると美和もリズムを刻むのをやめた。電子ピアノの音も消えていた。美和はぼんやりと顔を上げた。
「大丈夫?」と真知子は声をかけた。
「うん、大丈夫。ここは地球よね? 私、違う星に行っていたみたい」と美和は言った。







Episode 29


"Yuu asked," Can I have time after time? "
"I can go", said Titchi.
"Yeah, I can go, it's a song that is singing well with Chitchi," Tanabe said.
"You guys are doing quite astray," Makiko said.
"Okay! Will you go?" Miwa said.
"I will stop as soon as it seems so," Yu said.

In the proposal by Mashiko, the four people decided to play with "Tea ceremony".
"We used to do something like a karaoke competition or a small concert in our era of mothers.It is small but there is a stage, the walls of the shop are soundproofing.It is old but there is a set of drums and amp I'd like to see a little bit about what you are doing, you seem to play without discrimination, but I think that adults should try to see the situation calmly, "Makiko said.
"It may be nice to have a third party present," Tanabe said. Four people nodded and accepted Makiko's opinion.
"Did this shop feel like that?" Miwa asked.
"It is not a Showa retro only appearance." Machiko got out of the store sign and shut down the shutter half. "No one comes in with this"
"This set is equivalent to this set, but it is in very good condition," Miwa said.
"The set of drums belongs to my father, I still do not know where and what I am doing now but I think that I am somehow alive in some country because it's a musician. That set is probably very good Okay, the colleagues of that time come from time to time to put oil and change the skin, and in return I will treat the coffee. "
"Yeah, it's a nice drum," Miwa said while striking the snare with a conch. "A very clear treble.The skin is also nice color."
"It seems that trees and skins will fall asleep unless you play drums from time to time." It is important to let the sound echo and make it familiar with trees and skins, "Makiko said.
"Both the guitar amp and the base amp are vacuum tubes, this is also in the year," said Chitchi.

Four people finished their own sets and looked at each other.


"I'm watching firmly, so I'm OK" Makiko said. "If you are what you are saying, you will not be left alone to you," Makiko said.

"Let's feel slow, with a slow tempo as much as possible" Yu sang the first lyrics in the a cappella.

Lying in my bed I hear the clock tick,
I am lying in bed and listening to the sound of the clock hands
And think of you
While thinking of you

Tanabe played the cord and confirmed the tempo of Yu. Check the color of Yu song and the color of your guitar.
Titchi explores the riff of the base according to the atmosphere Yu and Tanabe create. Support two people with a small number of sounds.
Miwa had carved that rhythm with only Hihat, but I switched the stick to a brush and rolled over the snare. Pinned skin and brush hair make a sound clear and distinct sound.
Yu felt the sound which gently entangled with the song. "Beyond the Time". There was something that translated into the Japanese translation of Time After Time. Cindy may have done the way he felt like going beyond the time he had gone ahead. Although you are in the same place, you may feel that you are in a different world beyond time.
"Beyond Time"

Sound came on just after that.
A chord of treble like an electronic piano. In the beginning, it sounded idly, and eventually the sound became the fifth player to adapt to the performance of the four players.
Mashiko confirmed that Miwa lost consciousness. It is a feeling that the neck is hanging and it is moving only the body in response to the sound. At first sight it looks like he is frowning.
Yu noticed it and saw Mashiko. Mashiko signaled "Let's see a little more" with eyes. Yu noticed it somehow and kept on singing.


When Miwa began to hear the sound, I noticed that my thoughts had stopped. I hear the sound of the performance. There is also a feeling that the body is moving. It seems they are urged to stop thinking and to accept something. The consciousness was completely out of the performance.


The beast was standing on the meadow.
"Aoi? Aoi?" Miwa said to the beast.
"No, I am Miwa, you are of a different dimension," the beast said.
"Different dimension - are you mine?"
"Yes, you in you, your true figure"
"Is I also a beast, is not it just Aoi?"
"We are all the same figure, you and your friends"
"Why am I in such place? What is that sound?"
"That sound is the entrance to get in touch with you.This sound is for borrowing consciousness for a moment.I called you here because you can not meet you in my real world. In the world of you there is only one person, it is only the world of consciousness to meet the other person
Your guide in the real world is "twins of the soul". You have not noticed anything about it yet and may be too early to notice.
Time runs steadily in your world. You can not stop or delay. But that sound of you can change that flow. I want to tell it. "
"Do you play sounds of our band?"
"That's what Aoi attracted, playing. Because there is no substance in our world, I do not know what the performance is like. I only know the Aoi that I experienced.
A thousand years ago, Aoi decided to go to your world from our world, please lose all your memory. When I asked why such a thing would do, I told you that you are worried about your world.
And we can interfere with your world. You can not interfere with our world. That's a story about the difference in dimension.
Aoi made its "setting" every rule "business" and lost memory. I tried to awaken after finishing learning by "setting". And I regain my memory, I know myself, I remember the original meaning of life. And living a thousand years while suffering from that "work" as "setting". "If you truly sympathize, you are born in that world and you do not know the world unless you suffer in that world. That only makes me remember the meaning living in that world. Aoi remembered that way.
I heard the human suffering of your world from Aoi. It was a real distress. Your world has become inconvenient, contradictory, unreasonable and distorted. The distress is also creating the reality of "misery". We talked and decided to contact you. And now we are leading you to awakening.
"Awakening?"
"To return to your original self, to live according to the voice of the mind, not to rely on knowledge, to notice that I am a wonderful existence"
"My original self, is not this me?"
"You're an old man, I'm going to raise the version, it's like powering up, and for that you need your playing"
"What is the relationship between version up and performance?"
"Your performance keeps each other alive, Understanding the roles, it is unity in harmony.Siki's songs and human songs are sung .. As your world changes dramatically There, with your songs "
"Shiki's song and human song?"
"I know that time will come, we decided to contact one by one, sessions will happen to your friends"
"Contact one by one?"
"Yes, people in the world of this place will contact each other personally in your world directly.While it's okay to go to that world with a spaceship, but various troubles will occur , I judged that it is better to contact your consciousness directly now, so your friends will receive something from myself in this world soon.
"Is that a message sent to all of us in our world?"
"Yes, important message, I will accept it with my voice and dreams, when we contact you you usually tell it in the form of inspiration, intuition and dreams, if you meditate What I received at that time is a message from us, "the beast said. "Your message is from us"


Tanabe and Chitch also noticed that there was no consciousness of Miwa. However, the body recognizes the sound and carves the rhythm. It also captures the progress of the song. Four people excluding Miwa were signaled with eyes. "Let's continue this way for now" Four people confirmed it somehow.


Yu concentrated on the song.
Time After Time "Hearts passing each other" The passing heart. "Yuu thinks that" the feeling always passes with each other ". "It seems that my feelings are casting towards a different world, as though the times have passed, there is nothing to receive." Someone who is supposed to be in front of you, as if you are in a mirror, no matter how much you call out, your voice does not reach. "Time beyond time" flows separately.
Although he is in the same world, he seems to be in a different world.

"I wonder what I am thinking while singing" Thinking and words are doing different things.
I am in a different world.

I think about time and the world. When the feelings pass each other, it may be that the world is passing each other. The world of parallel lines. There is no time to cross anywhere.

Mashiko raised his hand and sent a signal saying "Let's stop once."
Three people unexpectedly stopped playing while watching it. The trembling of the strings of the guitar and bass echoes like noise as a lingering finish.
When that sound stopped Miwa also stopped carving the rhythm. The sound of the electronic piano also disappeared. Miwa abruptly lifted his face.
Meiko called out, "Are you OK?"
"Yeah, it's okay, this is the Earth, is not it? I seem to have gone to a different star," Miwa said.

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