趣味で歌と小説と詩を掲載させていただいてます。

流星のうた 第11話 Song of the meteor 11



第11話


「今どこ?」美和は開口一番にそういった。
「いつも・・の屋上・・・」消え入りそうな声が携帯から聞こえてきた。 

駅前のジャズバーの入っているビルの屋上だ。葵はよくそこで過ごしてると言っていた。 そこで何をしてるのかと聞いたら「星を見てる」と言っていた。


「どうした?大丈夫か?」美和は少し心配になった。
ん・・・。と葵は電話の向こうで言った。空気で喉を鳴らしただけの声だった。
「本当に?具合悪いのか?飲みすぎたのか?」美和は一気に喋った。
ん・・。と言って電話が切れた。 かけ直したが繋がらない。

今までに知っている葵の声ではなかった。駅前のビルまでは10分くらいで行ける。
美和は財布と鍵をポケットに突っ込んでタナベを急かした。「行くよ」
「そんな具合悪そうなのか?」
「わからない、ちょっと様子が変だと思う。とりあえず一緒に来て」美和はタナベの上着を投げて渡した。「オッケイ、行きますか」

美和とタナベはアパートの階段を下りて元町駅の方角に坂道を下っていった。
美和は早足で歩きながら空を見上げた。
少し曇っていて微かな星が見え隠れしている。
月はもう沈んでしまったらしく、その姿はどこにもなかった。 
月なんて、最近全然見てないな、美和は薄曇りの夜空に見切りをつけて道を急いだ。 星を見るって、葵は一体何をやっているんだろう。
坂の途中にコンビニがあったのでタナベに「水買ってきて!」と言って自分は先にビルに向かった。 嫌な予感がする。 
途中から少し小走りになり、高架下を抜けてからはダッシュで葵のいるビルまで走った。 

階段を駆け上がり屋上に出る鉄扉を開けようとしたが、鍵がかかっていて開かなかった。2〜3回ドアを叩いてみたが、状況は変わらなかった。ドアはしっかりとロックされていた。
「葵!」と一度大声で呼んでみたが、物音ひとつしなかった。 コンクリートの壁や床に反響しただけで、美和の声はどこにもだどり着かずに消えていった。
携帯を忘れてきたことに気がついた。電話をかけようとポケットを探したが持ってこなかったみたいだ。 鉄扉に両手をついて少し考えた。 

葵はここにいる。それはなんとなくわかった。でも返事ができないし、多分動けないでいる。
事件か何かに巻き込まれたのだろうか、警察を呼んだ方がいいのだろうか。
少し考えてからそれは後だと思った。 
多分そんなことじゃない。

タナベがコンビニの袋を下げて階段を上ってきた。ドアの前で立っている美和を見て「どうしたんだ?」と聞いた。
「鍵がかかってる」と美和はいった。
タナベはドアノブをガチャガチャ回して扉を押したり引いたりしてみた。「呼んでみたのか?」
「一回だけ、でも葵はここにいる気がする。多分動けないんだと思う」
「そうなのか?!なんで?」
「なんとなく、多分いると思う」美和はそう言ってタナベを見た。
タナベは美和のその思いに確信めいたものを感じた。
「いるとして、どうやって出たんだろ、鍵なんていつもは空いてるのかな」
「多分、いつも閉まってるんだと思う、防犯上」と美和は言った。
「出口は他にはなさそうだな」タナベは辺りを見回して腕組みをした。
「携帯持ってる?」美和はタナベに聞いた。
タナベがかけて美和がそれを受け取り耳に当てた。
コール音が鳴り始めた。 八回鳴って留守番電話になった。 もう一度かけなおす。
三回目のコールで回線が繋がった。 
「葵!」と美和は叫んだ。「美和・・・」葵が弱々しい声でそう言った。
「大丈夫なの?怪我してるの?」
「大丈夫、怪我はしてない・・・」と葵は言った。 さっきより少し声がはっきりしてきた気がする。
「動けないの?」と美和は聞いてみた。
「大丈夫、動ける、眠ってたみたいなんだ・・・」葵は電話の向こうでそう言った。
美和は眠っていたんじゃないことがすぐにわかった。 声に精気がなかったからだ。
「もう少ししたら戻るよ・・・」と電話の向こうで葵が言った。

美和はドアのところまで来ている、という言葉をぐっとのみ込んだ。 葵は一人でいたいのかもしれない、ふとそんな気がした。
「本当に大丈夫なの?なんなら迎えに行くよ」口を開きかけたタナベを制して美和は言った。

電話の向こうでしばらく沈黙が続いた。
その沈黙は、葵が途方もなく遠くにいるような感覚にさせた。このドアのすぐ向こうにいるはずなのに。 沈黙は電波を伝ってその距離感を曖昧にしていく。
「大丈夫だよ、自分で帰れる・・・」
その声はまるで月から発信されているかのように響いた。




美和は、葵が人を寄せ付けないところがあることを知っていた。 メンバーともあまり話をしない。 ほとんど自分とだけ、話をするような感じだ。 付き合いも悪かった。 部屋をシェアし始めたが、ほとんどの時間を一人で過ごしていた。 部屋にも帰らない日が何日もあった。 仕事も何もしていないと言っていた。 何をしているのかと聞いたら、「星を探してる」と言っていた。 説明も何もなかった。
美和は、それでも葵がなぜか気になった。 全部を聞くつもりも無いし、聞いても聞かなくても何も変わらないような気がした。 ドライなやつだと思えばそれほど気にならない。でもその無機質さが漂う感じは、少し狂気じみたものがあると感じていた。

どこかで人と確実に一線を引いていた。 
バリアのような結界のような入っていけない雰囲気があった。 何かに怯えているのかもしれない。 美和は、警戒心がそんな結界のような雰囲気を作るんじゃないかと思っていた。 何かに怯えて、その何かから自分を守るために結界をつくる。 閉じこもっているのだ。 
葵は何に怯えているのだろう。 美和は葵に出会ってからいつしかそんなことを考え始めた。 何をそんなに怯えているのだろう。 人間が怖いのだろうか。
葵の無機質さは、その時々で濃さを変えたが、閉じこもった心には不変の立ち入らせない雰囲気があった。

美和から見て、葵は確実に人間社会に属してはいなかった。








「自分で帰れる」葵はそう言って電話を切った。 まだ息が苦しい。 多分、呼吸が止まっていたのだ。 気を失っていたのは二時間くらいだろうか。 二時間、呼吸が止まっていても自分は死ねないんだ。 地獄だな、と葵は思った。 
死は、自分を見放して永遠に地獄に繋ぎ止める気なのだろうか。 
真っ暗なビルの屋上で、葵は二時間の死の中に見た幻想を思い出していた。 
その幻想は、今まで自分が接した人間が走馬灯のように現れ、実態化していく幻想だった。 

僧に会い、陰陽師に会い、侍や町人に会い、おりょうに会い、佐吉に会い、殺めた数多の人間に会い、凛太朗に会い、美和に会った。
幻想の中で、彼らは時を変え、場所を変え、何かを語り、何かを訴えた。
彼らは皆、自分に向かって何かの話をした。 聞こえるのはその場所の風の音や波の音、街の音や列車の音。 幻想は人間の話し声をそっくり消し去っていた。
それなのに人間は次々にやってきては、その無音の話を続けるのだ。

何を言っているのだろう。 人々は何かを訴えていた。
葵はその音のない訴えを必死で聞き取ろうとするが、いくらじっと耳を傾けても、彼らの声は聞こえなかった。 彼らの訴えは自分への忠告であり、たわいのない日常会話であり、罵詈雑言であるはずだった。 傷つけた魂の訴えは、次々に現れてはその声を発することなく、やがて別の誰かに引き継がれた。 
別の誰かが現れると場所が変わり風景が変わった。 街道のお茶屋から、新幹線の中に変わり、街の路地裏になり、庄屋の屋敷に変わった。
佐吉桜の花びらが舞い散る中、佐吉に肩を抱かれていたが、佐吉の声は届かなかった。
何を言っているのか、今なら理解できるはずなのに。 もうその声は永遠に聞こえることはないのだと思った。 風景が美和の部屋に変わり、美和が話をする。 音のない話を葵はただ受け入れるしかなかった。

人工的な振動がポケットから伝わってきた時に、美和は話をやめてゆっくりと立ち上がった。 そして何も言わずに葵を見ていた。

人工的な振動が途切れた時、何もかもが消えていた。 幻想は終わり、呼吸が再開された。息苦しい感覚が全身を包んだ。 葵はコンクリートに押さえつけられながら、再開された呼吸を微かな意思で繫ぎ止めた。 人工的な振動がまた伝わってきた時、再開された呼吸の中で現実の音が聞こえてきた。


葵は携帯の画面を見つめながらその確実さを確かめた。
美和が「大丈夫か?」と言っていた。 
現実の言葉だった。 すぐそこにいるように、美和は耳元で「大丈夫か?」と言った。 その言葉は、葵が巡らせた結界にするりと滑り込んで不意に内側からその膜を震わせた。 

「君は何にもわかってないんだよ」とクンネは言った。

「そうだね」と葵はつぶやいた。




葵は今の自分がいるこの都会の屋上で、気を失うほどに苦しんだ事に感謝した。 この経験がなければ、あたしは永遠に気づかなかったかも知れない。

「大丈夫か?」と美和が言った。

その声は、すぐそこで葵に囁いた。

大丈夫だ。 獣を受け入れるよ。

葵は美和に向かってそう言った。




Episode 11


"Where are you now?" Miwa said that the first time in the opening.
"The roof of the usual ..." A voice that seems to be lost is heard from the cell phone.

It is the rooftop of the building containing the jazz bar in front of the station. Aoi often said that he was staying there. When I asked what I was doing there, I was saying "I am watching stars."


"What's wrong? Are you OK?" Miwa became a little worried.
Hmm???. Said Aoi across the phone. It was a voice that just throat sounded in the air.
"Are you really feeling sick? Did you drink too much?" Miwa spoke at a stretch.
Hmm??. The phone ran out of saying. I tried calling but I could not connect.

It was not Aoi 's voice I knew so far. It is possible to go to the building in front of the station in around 10 minutes.
Miwa hurried Tanabe by putting his wallet and key in his pocket. "I'm going"
"Is that sick like that?"
"I do not know, I think that the situation is strange a little. Come with me for the time being," Miwa threw a Tanabe's coat and handed it over. "Okay, are you going?"

Miwa and Tanabe descended the stairs of the apartment and went down the slope to the direction of Motomachi station.
Miwa looked up at the sky while walking fast.
It is slightly cloudy and faint stars are invisible.
The moon seems to have already sunk, and its appearance was nowhere.
I have not seen the moon recently, Miwa hastened the road with a clog in the light sky night sky. What does Aoi do on the planet?
Because there was a convenience store on the slope, I told Tanabe "buy water!" And I headed for the building first. I have a bad feeling.
I ran a little farther from the middle and after running through the elevated track I ran to the building with Aoi with a dash.

I tried to open the iron door running up the stairs and going out to the roof, but it was locked and it did not open. I hit the door two or three times, but the situation did not change. The door was locked tightly.
I call it "Aoi!" Once in a loud voice, but I did not make a single sound. Just echoing on the concrete walls and floor, Miwa's voice disappeared without reaching anywhere.
Miwa noticed that he forgot his cell phone. I searched my pocket for making a phone call, but it seems I did not bring it. Miwa thought a bit with his hands on the iron door.

Aoi is here. I figured it out. But I can not reply, I can not move.
Perhaps it was better to call the police, whether it was involved in a case or something.
I thought it was a while after thinking for a while.
Probably not.

Tanabe lowered the bag at the convenience store and came up the stairs. I saw Miwa standing in front of the door and asked "What happened?"
"Miwa said" It's locked ".
Tanabe turned the doorknob and rattled the door by pulling it. "Did you call it?"
"Only once, but Aoi seems to be here, I think it probably will not move"
"Is that so? Why?"
"I think it is probable," Miwa said so and saw Tanabe.
Tanabe felt something that Miwa convinced of that thought.
"Well, how did you come out, I wonder if the keys are always free?"
"I think that it is probably closed all the time, on crime prevention," Miwa said.
"The exit does not seem to be any other." Tanabe looked around and did armpits.
"Do you have a cell phone?" Miwa asked Tanabe.
Miwa accepted it after Tanabe put it on the ear.
The ringtone began to beep. I rang eight times and became an answering machine. I call you over again.
The line was connected by the third call.
"Aoi!" Cried Miwa. "Miwa ..." Aoi said so with a weak voice.
"Are you all right? Are you hurt?"
"Okay, I have not been hurt ..." Aoi said. I feel that the voice has become a bit louder than before.
"Might not move?" Miwa asked.
"It's okay, I can move, I seem to be asleep ..." Aoi said so at the other end of the phone.
I soon realized that Miwa was not sleeping. It is because there was no mental voices.
Aoi said over the phone "I will return a bit more ...".

Miwa entered the word that he came to the door. Aoi might want to be alone, I suddenly felt that way.
"I'm really okay, I will pick you up." Miwa said, limiting the Tanabe who opened her mouth.

Silence continued for a while at the end of the phone.
The silence made me feel like Aoi is tremendously far away. You ought to be right over this door. The silence transfers radio waves and obscures the sense of distance.
"I am OK, I can return home myself ..."
The voice sounded as if it were being transmitted from the moon.




Miwa knew that Aoi could not hold people. I do not talk much with members. It almost feels like talking with myself almost. My relationship was also bad. I began to share the room, but I spent most of my time alone. There were days when I did not go back to my room. He said he was not doing any work either. When asked what I was doing, I was saying "I'm looking for a star". There was not any explanation either.
Miwa still worried why Aoi for some reason. I did not intend to listen to everything, I felt that nothing changed even if I heard it or not. If you think that it is a dry guy you do not mind it much. But I felt that the feeling of its mineraliness drifted a bit crazy.

I was definitely drawing a line with someone somewhere.
There was an atmosphere that could not enter as barrier like barriers. It may be frightened by something. Miwa thought that vigilance would make the atmosphere like such a barrier. To be frightened by something, to create a barrier to protect you from something. It is confined.
What is scared of Aoi? Miwa began thinking about such a thing after encountering Aoi. I wonder what is being frightened so much. I wonder if people are scared.
Aoi 's mineral matter changed its strength from time to time, but there was an atmosphere in which a confined heart could not enter unchanged.

From Miwa, Aoi certainly did not belong to human society.








"Aoi who can return home" said so and hung up. My breath is still painful. Perhaps, the breath was stopped. Is it about two hours that I was missing it? Even if breathing is stopped for two hours, I can not die. Aoi thought he was a hell.
I wonder if death is going to let himself out and connect to hell forever.
On the roof of a pitch dark building, Aoi remembered the illusion I saw during a two-hour death.
The fantasy was an illusion that human beings touched up so far appeared like running lamps and became real.

I met a priest and met a samurai and a citizen, met a ruler, met a Sakichi, met a number of human beings who killed, met Rinrou and met Miwa.
In the illusion, they changed times, changed places, talked about something, appealed something.
They all talked about something about themselves. The sound of the wind and the sound of the waves, the sound of the city and the sound of the train can be heard. The fantasy had completely erased human speech.
Even so, once humans arrive one after another, keep on talking about that silence.

I wonder what he is saying. People were suing for something.
Aoi desperately tried to hear the soundless appeal, but no matter how much I listened, they could not hear their voice. Their complaint was advising themselves, it was an unfamiliar everyday conversation, it should have been an abusive phrase. The appeal of the injured soul eventually appeared one after another, without giving out its voice, and eventually succeeded to someone else.
When someone else appeared, the place changed and the landscape changed. From the tea house on the highway, it turned into a bullet train, turned downside of the alley of the town, changed to a house of Shoya.
While the Sakichi cherry blossom petals were scattering and dancing, Sakichi was holding a shoulder, but Sakichi 's voice did not arrive.
You ought to be able to understand what you are saying now. I thought that the voice had never been heard forever. The landscape turns into a room of Miwa, Miwa talks. Aoi only accepted the story without sound.

When artificial vibration was transmitted from the pocket, Miwa stopped talking and slowly stood up. And I was watching Aoi without saying anything.

Everything was gone when artificial vibration broke off. The illusion ended, breathing was resumed. A stuffy sensation wrapped the whole body. Aoi stopped the resumed breath with a slight intention while being pressed down by the concrete. When artificial vibrations were transmitted again, real sounds were heard in resumed breathing.


Aoi checked its certainty while looking at the mobile screen.
Miwa said "Are you OK?"
It was a real word. As Miwa is right there, Miwa said at his ear "Are you OK?" That word slipped into the boundary where Aoi was able to surprise and unexpectedly shook the film from the inside.

"You do not understand anything," Kunne said.

"That's right," Aoi murmured.

Aoi tried to change this life like hell with strength. I struggled to become a human figure, I did not think about my inner change.


Aoi thanked me for suffering enough to lose my mind on the roof of this city where I am now. Without this experience, I may not not notice it forever.

Miwa said "Are you OK?"

The voice whispered to Aoi there soon.

Should be fine. I will accept beasts.

Aoi said so toward Miwa.





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